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ききがたり ときをためる暮らし(つばた英子、つばたしゅういち/聞き手:水野恵美子、撮影:落合由利子)

ききがたり ときをためる暮らしききがたり ときをためる暮らし
(2012/09)
つばた英子、つばたしゅういち
聞き手:水野恵美子、撮影:落合由利子

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何ヶ月か、図書館で予約待ちしていた本が届いて読む。はて、私はどうしてこの本を知って、なんでリクエストしたのだったか、全く思い出せない。誰かから紹介されたような気もするし、新聞かなにかで見たような気もするし、しかし記憶がはっきりしない。

しかも、ネットで本の予約をしたり、貸出期限をチェックするたびに、予約リストにあがっているこの本のタイトルを目にしていたが、本が届くまで、私は、友達におしえてもらった別の本を予約していたのだとばかり思い込んでいて、本が届いて、あれ、違うと気づいたのだった。

「ききがたり」のこの本は、1928年うまれの英子(ひでこ)さん、1925年うまれの修一(しゅういち)さんのお二人の暮らしを、一年かけて毎月、朝・昼・夜とゆっくり一緒に過ごす時間をもつことでうまれている。

そうして時間をかけて聴きとってきたことが、「土を耕す」「シンプル・イズ・ベスト」「すべての暮らしは台所から」「大切なこと」という4つの章におさめられている。

英子さんの「自分に具わった感覚で、物事を判断する」ということ、それを通してここまで生きてきはったことが、こんなふうに語られている。
▼こんな経験をしたから、自分の考えに従って生きよう、と私は強く思うようになったんですよ。何もわからないまま流されて、「右と言われれば、みんなと一緒に右へ行く」というのではなくて。自分に具わった感覚で、物事を判断していこうと。だからテレビや新聞で言っている多くのことは、へぇっという感じで、ぜんぜん信用しまんよ。そういうものにみんな毒されちゃってますけど、私は、自分で感じたことしか信じない。頭でじっくり考えるというより、勘ね。迷ったら自分の感性を信じて、これまでやってきました。修一さんとの暮らしも、そうでしたよね。(pp174-175)

英子さんの「こんな体験」とは、終戦間近の6月、女子挺身隊として工場に通っていたときのこと。もうすぐ工場というところで空襲警報が鳴り響き、英子さんはとっさに来た道を引き返し、警報解除のあとも工場へ戻る気になれずに「家へ帰りたい」と家に向かう。その帰途で大地震のように揺れたのは、工場に1トン爆弾が落とされた衝撃だったと知る。たくさんの友人、多くの人が爆死した。「家に帰りたい」という気持ちが、自分の生死をわけたのだと英子さんはふりかえる。

修一さんとの暮らしでも、「世の中のしきたりに従って流されて生きていると、決して幸せなことにはならない」(p.175)、冠婚葬祭のおつきあいは一切やめよう、盆暮れの贈り物、つけ届けも一切しないと、結婚生活をスタートしたという。

親戚、身内、お世話になった人であろうと、修一さんは結婚式に出ていないし、お祝いの類も贈ったことがないという。唯一例外は、母親の葬式と娘の結婚式だというから、徹底している。

そんな修一さんの哲学と自分の哲学について、英子さんは「彼の哲学と、私の哲学は、ぜんぜん違います。でも、お互い世の中の常識には流されず、自分の感性でいいと思ったことを続けてきた。そういうところは、二人とも合ってますね」(p.177)と言う。

そういう生き方を、英子さんは、「自分流に生きてきた」とも語っている。
▼うちは世の中の流れとは、ぜんぜん離れてやってきましたね。
 だいたい二人とも、人の言うこと聞いて、信用するような人種じゃないんですよ。それぞれが、よく、自分流に生きているなって、ほんと、そう思いますよ。でも最初から好き勝手に自分流にやってきたわけではないの。見たり、聞いたり、いろいろしたうえでね。いいと言われるものは、私も関心があるから、なるべくやってみる。やってみないと、どんなものかもわかんないから。それを知ったうえで、いいということでも、そのとおりにやることは、ほとんどない。やっぱり、一度は疑ってみる。それで自分の感じたことを大事にしているのね。(p.207)

本のタイトルにもとられている「ときをためる」というのは、英子さん自身の実家の教えと、お金の余裕がない結婚生活のなかでの経験からきている。「間に合わせのものではすませず、買えるまで気長に待つ。そう、ときをためる暮らしでね」(p.79)と。

なんでこの本をリクエストしたかは思い出せないが、世間の流れに拘泥せず、ここまで生きてきた80代のお二人の暮らし、そこにいたる原点を見せてもらえたのは、わるくなかった。自分流に、自分の考えにしたがって、それでいけばいいんだという気がした。

(7/6了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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