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TRIP TRAP トリップ・トラップ(金原ひとみ)

TRIP TRAP トリップ・トラップTRIP TRAP トリップ・トラップ
(2013/01/25)
金原ひとみ

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金原瑞人の娘?ということは何となく知っていたが、この人の本は全く読んだことがなかった。たまたま文庫棚にあって、借りてみた。

マユという子が主人公。15の中学生だったマユは、パチンコ屋で働く年上の男の寮に潜むように同棲していて、学校には行ってない。男に縛られ、自分も縛りつけているような。そんなマユの生活は、あとの章で、少しずつ年齢が上がっても、あまりかわらない。携帯をいじって、タバコを吸って、酒を飲んで、男をひっかけているのか、ひっかけられているのか。何かに依存することで、やっと生きているようにも感じられる。

マユが夫とパリに行く章、ハワイへ行く章、そして子どもができたマユが子連れでイタリアへ行く章…男への依存、エキセントリックな行動、そういうのを読んでて、加藤和彦と結婚したあとの安井かずみが、こんな感じやったんかなーと、かってに想像した。依存というのか、加藤を縛り、自分を縛りつけるように結婚後を生きた(ように読める)安井かずみ。

マユの姿は、それに似てる気がした。
パリでのマユは、夫に「フランスにいる間、片時も私から離れないでね」などと言う。

▼…とにかく一人で何かしなければならない状況が私は嫌で、いつも彼と二人で共同責任でなければ嫌だった。私は彼の保護下にあって、私の責任は私ではなく渠にあるという状態でなければ真っ当ではいられなかった。
 …(略)依存している私を責める彼に、依存させた責任はそっちにある、と私は苛立っている。あなたがスポイルしてくれると言ったから、私は一人で生きていけなくなったのに、今更自立だの何だのと言われたところで、そんなのは受け入れられない。(p.130)

マユは、そうして依存して、男を自分に縛りつけるようにして、でも、そのなかで、自分が何を見て何を感じているかを省みてもいる。

▼彼といると、他の人が色々な面を持っている事が分かる。決して自分の感じた事が全てではないのだと分かる。彼と知りあって、そうして二人で色々な経験をしてきたのに、どうしてだろう私は彼の事を偏見にまみれた目でしか見れない。彼が女と話していると気が狂いそうになるし、彼は私の事を大切にしてないと思い込むし、彼が携帯で話しているのを見ると女じゃないかと疑うし、一緒にいない時は浮気か浮気でなくとも何か私の事を裏切っているんじゃないかと不安になる。彼と一緒にいると、色々なものが見えてくるのに、私の目から見える彼という生き物は、どんどん現実の彼とはかけ離れていって、歪んでいっているような気がする。(pp.163-164)

子連れで初めて出た旅がヨーロッパで、その行きの道中の十数時間で、もうマユはへとへとになっている。子どもをなんとか泣かせまいとし、泣き出す子どもに泣きそうになり、ずっとずっとずっと、腱鞘炎になりそうなほど子どもを抱っこし続けている。そこに、マユの変化が垣間見える。

▼…生まれてこの方自立を拒み続けていた私が、とうとう何かを出来る人間になりたいと思うようになった。何も出来ない女でいたい、いつも誰かに何でもしてもらえる人間でありたい、そう望み続けていたのに、もうそういう女であり続ける事が出来なくなってしまった。…(p.223)

子どもをもって、多くのものを得て、多くのものを失ったと思うマユ。「少なくともあらゆるものを捨て去って、女は母になる」(p.215)と思うマユ。マユがぶるぶるとするほど抱っこを続けているあいだに、隣の席で夫は本を読んだりもして、それにストレスを感じるマユ。

▼…この21世紀に於いても母親が育児の90パーセントを受け持つ風潮が生き残っている現実への憤りを皮肉に笑ってやり過ごすために、私は出産してから何度も頭の中で繰り広げてきたバカみたいな押し問答を繰り返していた。(pp.207-208)

これは、マユの自立だろうかと、思いながら読んだ。一人の男に自分を縛りつけていたマユの関係のとり方が、少しずつ変わっていく。ほとんど目の前の男のことしか見ていない(見えていない)かのようだったマユが、変わっていく。

その変わっていくマユに、私はちょっとほっとしたのだ。

(6/7了)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第44回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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