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白雪堂化粧品マーケティング部峰村幸子の仕事と恋(瀧羽麻子)

白雪堂化粧品マーケティング部峰村幸子の仕事と恋白雪堂化粧品
マーケティング部
峰村幸子の仕事と恋

(2013/02/07)
瀧羽麻子

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文庫棚にあって、裏表紙の紹介をぴらっと読むと「お仕事小説の白眉」とか書いてあるので、借りてみた。長くておぼえられないタイトルである(単行本のときは『白雪堂』というタイトルだったらしいが、それはそれでワカランよな~)。

著者の名前は「たきわ あさこ」。文庫タイトルにある主人公の名前は奥付のルビでは「みねむら ゆきこ」だが、本文では「幸せな子供で、サチコ」(p.79)になっていて、何かが間違っているようだ。(※)

白雪堂化粧品に新卒で入った峰村の、初夏から次の春までが描かれる。「はじめははじめて」「なにかをかえる」「ひたすらはしる」「どんでんがえし」「それぞれのみち」「おわりとはじまり」と、章のタイトルがすべてひらがな書きなのが、ちょっと目をひく。

このお仕事小説はなかなかおもしろかった。まず人物造型がくっきりしている。主人公の峰村、先輩の槙さん、同期の成宮、白雪堂化粧品の創業者の娘で「シラツユ」という主力ブランドを30年率いてきたマダム、といった会社の面々、そして峰村のプライベートでそれなりの存在感がある院生の(それは就職浪人の仮の姿であるらしい)直也など。
峰村は、槙さんとともに、発売から30周年をむかえる「シラツユ」販促キャンペーンのチームに加わることになる。白雪堂といえばシラツユ、というほどの代表的な商品とは比べにくいが、『We』も、いまの前身の『新しい家庭科We』の創刊からはほぼ30年。

この販促キャンペーンの話や、シラツユブランドをつくりあげ手塩にかけてきたマダムの言動などは、『We』がこの先売れるのかというようなことを考えるうえでも、なんだか気になるし、フェミックスはどうかと振り返って思うところもずいぶんあった。

「コンセプトっていうのはね、単純にいえば、どんなものをどんなひとにどんなふうに売るかってことよ」(p.42)と、槙さんにかみくだいて教えられ、峰村は過去30年分の業績数値をまとめる。数字は、販促としてやっていることが正しいかどうか、判断を助けてくれる。問題は、白雪堂ではそういったデータがまとまっていないことだった。

▼売上の変化をグラフにしてみて、ぎょっとした。信じられないことに、売上げは三十年前と比べて三分の二ほどに縮んでいた。物価の変動があるから、数量ではほぼ半減に近い。自分の手で加工しただけに、年を経るにつれてじりじりと短くなっていく棒グラフは、リアルだった。(pp.44-45)

「シラツユ、大丈夫なんでしょうか」としょげる峰村を、槙さんは「しかたないのよ、ずっと同じメッセージで、同じタレントを使って売ってきたんだもの。よくこれまでがんばってきたなって思うわ」と慰める。

▼ブランドも生きものなのだ。人間と同じように歳を重ね、最後には死んでしまう。(p.45)

その「シラツユ」をなんとかする計画を峰村や槙さんは考える。不景気だから仕方ないだろうと上司に言われながら、でもそれだけじゃない、「シェアが落ちてきたのはずいぶん前からです。思い切ってなにか新しいことをやらないと」と峰村は考える。そうして峰村たちがたどりついた案は、「ブランドの若返り」だった。

シラツユを使っている消費者を年代別に示したグラフを比べ、今のシラツユのお客さんは30年前から使っている人たちが大半で、新しいユーザーを取り込めていない、という仮説を峰村たちは示す。このままお客さんが高齢化するばかりでは苦しい、ターゲット層をもう少し広げていかないと、ということだ。

「ブランドの若返り」という案をすすめていこうとして、上司やマダムのダメ出しにあいながら、峰村と槙さんはあれこれと知恵をしぼる。ある日、居酒屋で二人で飲んでいてひらめいたのは、シラツユの下に「子供ブランド」をつくることだった。だがその提案も、なかなかマダムのお気に召さない。

▼「なにかを変えるって大変なことなんだね。ものごとも、ひとの考えかたも。シラツユがまさにそうじゃない? ずっと同じやりかたでやってきて、周りからも評価されて。その積み重ねがあると、簡単には変わらないし、変えられないのかも」(p.71)

『We』のことを、つい重ねてしまう。周りからの評価がどのくらいかはともかく、ここまでやってきた30年、いまの『くらしと教育をつなぐWe』に変わってからも20年という年月。シラツユのお客さんのように、『We』のお客さんも、20年前、30年前の方々が、そのまま高齢化している部分が大きい。Weフォーラムへ初めて行った頃に「若い」と言われていた私が、いまだに「若い」と言われたりするのだ。

峰村と槙さんは、あきらめず、しつこくマダムを説得した。シラツユをもっと多くの人に使ってもらいたい、せっかくの商品を今のユーザーだけが独占しているのはもったいない、若い人にもっとシラツユのよさはわかってもらえる、等々。

そして、マダムから、シラツユの子供ブランドにはGOが出た。そのあとも、いくつかの壁はあるが、峰村はそれに対処しながら、仕事とか働くということを考える。そこのところの悩みや迷い、よろこびやホッとする気持ちなど、そうやんな~と共感できるところがあった。

峰村が23歳、峰村が頼っていた槙さんが30歳、今の私よりずっと若いなあと思う。マダムが、昔に比べたら頭が固くなって、動きが鈍くなってきたかもしれないと自身を振り返るところに、ちょっとどきっとした。

転々といくつも職場を変わってきた自分を振り返って、私は仕事になにを求めているのだろうなあ、ということも考えたりした。

※主人公の名のよみについて、角川書店にたずねてみたところ、奥付のルビが間違いで、次回重版の際には修正するという連絡をいただいた。

(6/5了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第42回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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