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風の島へようこそ(アラン・ドラモンド)

風の島へようこそ風の島へようこそ
(2012/02/15)
アラン・ドラモンド

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福音館の『母の友』という雑誌で、大野更紗さんが連載してるというのをどこかで見て、図書館にあるかなと調べたら、あったので、昨年春の連載スタートにさかのぼってちょっとずつ読んでいる。

その『母の友』で大野さんが紹介していた絵本を借りてきてみる。日本語版は去年(2012年)、原作は一昨年(2011年)に出ている。

デンマークにある小さな島・サムス島は、海にかこまれていて、いつも強い風が吹いている。少し前までは、電気や燃料のつかい方も、「とてもふつう」で、暗い冬の夜にはあかりをたくさんつけ、暖房であたたかくして、お湯もつかいほうだいだった、という。その電気は、デンマーク本土の火力発電所から、海底ケーブルで届けられていた。

あるとき、デンマーク政府が、どこかの島を選んで、そこで使うエネルギーをすべてその島でつくろうという計画をたてた。選ばれたのはサムス島。

「サムス島を自分たちのつくるエネルギーだけでくらせる島にしよう」という計画がうごきだす。子どもたちは、新しい考えにわくわくしていたが、大人たちがわくわくしはじめるには、もうちょっと時間がかかった。「今のままでいい」「カネがかかる」「まっぴらごめん」「べつの島の人たちにがんばってもらったら?」等々、変わること、変えていくことには抵抗も大きかった。

この計画のリーダーとなったソーレン・ハーマンセンさんは、あきらめず、いろんなひとによびかけつづけた。
▼みんなは少しずつハーマンセンさんの話に耳をかたむけるようになり、自分たちでエネルギーをつくる計画に賛成する人もふえはじめました。でも、じっさいにはだれも、なにかを変えようとはしませんでした。

「実際には誰も、何かを変えようとはしなかった」、それは、ほんとにほんとにたくさんあることだろう。私自身も、なかなか変えられない、変わらない。

けれど、動き出すきっかけはどこかにある。サムス島が停電になったとき、激しい嵐の中でも風車のおかげで停電なんてへっちゃらだったという話がかけめぐって、みんなが自然のエネルギーを使いだすきっかけになった。

サムス島は今、風力発電や太陽光発電にくわえ、麦わらや木ぎれを燃やしてその熱を暖房につかったり、菜種油でトラクターを動かしたりするようになった。暮らしはだいぶ変わり、風がとても強い日には、自分たちが使う以上の電気をつくれるので、デンマーク本土へ電気を送っているほどだという。

実話をもとに描かれた「風の島のものがたり」。巻末には「エネルギーとわたしたちのくらし」という解説があり、これがコンパクトによく説明してあって、わかりやすい。その後ろの、「自然の力ですべての電気を―人口4000人の島の挑戦―」という井田徹治さんの文章もいい。

▼自然エネルギー100%プロジェクトは、欧州連合(EU)などの補助金で始められたものだが、ソーレンは「島民がお金を出し合い、自分たちで風車を建てる」という原則にこだわった。「自分たちのものでなければ、風車なんて邪魔者だよ」と彼は言う。「どこかの会社の人間がやってきて建てた風車だと、それが回るときの音がうるさくて腹が立つ。でも、それが自分のもので、風車が回れば収入になると思ってごらんよ。今度は、風車が回る音がしないと、気が気じゃなくなるもんさ」。

自分たちがお金を出して、自分たちのものを持つ。それは、自治ということと深く関わっていると思う。なかなか変わらず、動かなかった大人たちの姿とともに、そこに呼びかけ、人の気持ちを耕してきたソーレンさんが「サムス島で産まれ育った、ごくふつうの人」で、「音楽が好きで、バンドではベースギターをひいて」、「環境を守るために、いろいろなことをしたいと考えていた」というところに、心ひかれる。自分たちにも、できるんじゃないかと思えてくる。

(5/14了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第39回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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