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ルポ 差別と貧困の外国人労働者(安田浩一)

ルポ 差別と貧困の外国人労働者ルポ 差別と貧困の外国人労働者
(2010/06/17)
安田浩一

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『ネットと愛国』の人の、別の本を読んでみる。奴隷労働ともいわれる「外国人研修・技能実習制度」(政府は、これが国際協力であり国際貢献だと言い続けている)によって日本で働く中国人の状況を第一部で、移民としてブラジルへ渡った日本人の子孫が、日系デカセギ労働者として働く状況を第二部で、それぞれ追ったルポ。

「単純労働者は受け入れない」というタテマエを崩ささない日本政府は、日本において単純労働に携わる研修生・技能実習生や日系人を、あくまで「例外」として位置づけてきている。けれど、その「例外」と位置づけられる人たちの働きによって、食べるもの、着るもの、自動車、家電など、日本の産品の多くは成り立っている。

研修生・技能実習生の制度がひどいものだということは耳にしていたけれども、第一部で明らかにされていく、この制度によって「働く」人たちの実態を読むと、たまらなくなる。消費者として手にするものの「安さ」や「国産という安心感」みたいなもの、それは下へ下へとしわ寄せされた要求を、最後のところでこうして「働く」人たちに無理やりのんでもらうことで成り立っているのだと、ぐさぐさと突き刺さる。
▼過疎地の農場や、元請けからの無茶な要求に泣かされる縫製工場の経営者が追い詰められた挙げ句、さらに弱い立場の者を下部に置くことで、帳尻を合わせる。なんと残酷なピラミッドなのか。真っ先に傷つくのは研修生であり、そして、その責任を取らされるのは受け入れ企業である。大手スーパーも、デパートも、メーカーも、アパレル会社も、地場産業の衰退など知ったことではない。大企業から見れば、下請け工場や農場など、研修生同様「使いまわしのきく労働力」に過ぎないのだ。ミシンの軋む音は、研修生の悲鳴であり、零細経営者の慟哭である。
 「国内産」「Made in Japan」──食料品や洋服に貼られたラベルを見るたびに、私は目に見えないもうひとつのラベルを想像する。
 Made by Chinese──。
 日本の地場産業を支える、外国人の姿だ。(pp.149-150)

日本人の「労働者」に対して、携帯電話やパソコンをもつのは禁止だとか、残業の時給が300円だとか、1日十数時間働いて5万円だとか、どんなにブラックな企業であっても、それはしないだろうということが、外国人の研修生相手にはまかりとおっている。

しかも、トイレの休憩時間さえわずかな対価から引く会社さえあるという。ぎちぎちにつまった、しかも長時間の労働。研修生かどうかはわからないが、勝山実さんが「おでん工場」でバイトをしたとき、人間のスピードに機械をあわせるのではなくて、MAXを振りきるような最速の機械のスピードに人間があわせることになっていたと、『ひきこもりカレンダー』で書いていた。

勝山さんはその仕事から「降りる」のだが、周りで働いていた外国人労働者は、その非人間的なスピードの仕事に文句も言わず、黙々と働いていたという。その光景が、この本で書かれている過酷な現場に重なる。

未払い賃金や慰謝料を求めて実習先企業を訴えた研修生が、判決後、「勝訴」の垂れ幕とともに「我們不是奴隷(私たちは奴隷ではない)」と掲げたところに、問題がはっきりとあらわれていると思う。

▼派遣切りは外国人から始まった。もっとも弱い部分から、はじかれる。
 人手が足りないときは形だけ持ち上げられ、不況のときは真っ先にクビを切られる。これが、いわゆる非正規労働者というものだ。昨今、この非正規をめぐる議論は喧しい。だが、外国人は30年も前からずっと、こうした働き方を強いられてきた。日本経済にとって、ひたすら都合の良い存在であり続けた。企業の繁栄を支え、あるいは不況企業の延命に力を貸した。しかし我々の社会は、その外国人を社会の一員として明確に認識したことがあっただろうか。(p.311)

フリーターが問題になったのは、大卒の男がフリーターに現れはじめたからだった。女性の多くは、ずっとずっとそういう働き方をしてきたけれど、問題にされることはなかった、というのがぼんやり思い浮かぶ。……"女は前からずっと、こうした働き方を強いられてきた。日本経済にとって、ひたすら都合の良い存在であり続けた。"と、読みかえても、同じように通じるなと思う。

(5/6了)
 
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2013.05.14 Tue 20:29 らんぷ店主  #-
谷町で店をしていた頃の常連さんに、中国人の研修・実習生の問題に長く取り組んでいる方がおられました。
あちこち相談に乗っているうちにその人の連絡先が遠く東北の最北端に流れて、そこからSOSを貰って行ってみたら、真冬なのに工場の敷地内に立てたプレハブ小屋で女の子たちが震えていたとか、21世紀のこの日本で「女工哀史」ばりの話をいくつも聞きました。
裁判中の当事者たちを連れて店に来てくれたこともあります。「なんか、辛いの好きな地方の子たちなんで、そういうの作って。」とか。
中国人の友人に聞くと、送り出し側の中国では研修・実習生には必ず黒社会(ヤクザ)が絡んでいると言っていました。日本に来る前に借金しているから、労働がきつくてもなかなか辞めて帰ると言い出せないこともあるとか。
実習生たち  [URL][Edit]






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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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