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誰かが足りない(宮下奈都)

誰かが足りない誰かが足りない
(2011/10/19)
宮下奈都

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駅前広場に面した小さなレストラン。店の名は「ハライ」。
広場の真ん中には噴水があって、そのまわりに置かれたベンチにはいつも誰かが座っている。いつも一つだけ開いているベンチの向かいがハライ。オープンテラスのテーブルに運ばれる料理からいい匂いがしてきて、ベンチにいた人はがまんできずに店に入るのだという。

このハライを10月31日の6時に予約した、それぞれの人たちの6つの話。なにか生きづらい、うまくいかなくなってしまった、そんな人たちが描かれる。
たとえば「予約4」の話。笑顔で自分の病気について話した母がほどなく亡くなって以来、「僕」は人そのものが信じられなくなった。姉が結婚したあとは、妹と暮らすひきこもりの僕は、ビデオカメラを回すようになって、部屋から出られるようになった。ビデオを撮りながらであれば、電話に出ることも、玄関へ出て小包を受け取ることもできる。こんな兄と暮らすのは厄介だろうに、高校生の妹は「せっかく一緒に暮らしているのだから、ごはんはなるべく一緒に食べよう」と言う。

妹の友人の篠原さんは「何を撮っているんですか」と聞いてきた。誰も僕に聞かなかった質問だ。
▼生身の篠原さんはテーブルに置かれたビデオカメラのレンズにではなく、ここに居る生身の僕に向かって話しかけている。
 生身って脆い。ちょっとした声の調子で不安になったりするし、相手を目を見つめ返すだけで心臓がドクドクする。苦手だ。逃げ出したいくらい苦手だ。(pp.109-110)

僕と、篠原さんと、妹の話がゆるくからみながら、僕は「失われても、取り戻せる。」「いつか、また。」と思う。「今」を取り戻そうと、している、僕。

▼誰かが足りない。
 そう思えるのは、もしかしたらしあわせなことではないだろうか。足りない誰かを待つことができるから。満たされる日を夢見ることができるのだから。(p.174)

(5/1了)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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