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ひきこもりカレンダー(勝山実)

ひきこもりカレンダーひきこもりカレンダー
(2001/01)
勝山実

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『安心ひきこもりライフ』がおもしろかったので、さかのぼって『ひきこもりカレンダー』を借りてみた。『…ライフ』は、もう、ひきこもり仙人のような達観を感じたが、10年前のこの『…カレンダー』は、まだ、かなりナマナマしい。

勝山さんの親、とくに母親がかなり凄い人だったらしいことは『…ライフ』でも書かれていたが、こっちの本では、親が悪い、全部親が悪い、親が憎い、親に土下座させたいと、すさまじくののしってある。

たとえば冒頭。
▼まず、ボクの親が激烈でした。
 人並みの子供でいてほしい、他人に褒められるようないい子に育ってほしいと望むあまり、元来利口でないボクは母親の怒りに触れ、よく殴られたものです。子供を折檻して死なせてしまう親がいますが、あれはボクの親のことです。ニュースにならなかったのは、ボクが頑丈だったのと、従順に母親の要求に応えようと、生きるための必死の努力をした結果です。(pp.5-6)
子供のころ、「友達たくさん、明るく元気な礼儀正しい少年」という親のリクエストに、死にものぐるいで応えた勝山さんは、中3の頃からおかしくなりはじめ、それでも高校受験に勝って「学区内で偏差値が一番高い学校」に入る。その最後の親孝行のあとに、真っ白になった勝山さんは、この受験勉強=穴掘り=たくさん掘ったやつが勝つというのが、いつまで続くの?と思ったときに、壊れてしまった。

「結局のところ、両親がボクにしてきたことというのは、ボクの居場所とボクの時間を奪うことだったような気がします」(p.45)と勝山さんは書いている。

ひきこもりながらバイトをしたときに、その作業のスピードがとてつもないものだったと、勝山さんはいう。
▼作業自体は子供でもできそうな単純作業なのですが、それをこれ以上、スピードアップできないくらいの速さでこなしていくのです。…機械からはおでんの具のパックがぞろぞろと出てきます。それを袋に入れていくのです。3人くらいでやるのですが、誰も何も話しません。一言しゃべれば仕事についていけないくらいの速さなのです。これが仕事というものなのかなと考えたね。これが世の中のスタンダードなのかと。お金をもらうということ、生活をするということはここまで厳しいものなのかと考えてしまった結果、ボクの出した結論は正しくない、というものでした。これは非人間的、機械優先の世の中、というか職場である。もっと人に優しくと思ったわけです。
 こんな人に厳しい職場が世界標準[グローバルスタンダード]になるのか? そんなことを考えながら、おでん工場で働くオレ。(pp.151-152)

▼ボクらは機械じゃないのに、より機械的な能力のある人間を求める世の中。このままひきこもっているのが正解です。増えていますからね、ひきこもり。(p.163)

巻末には、勝山さんと斎藤環の対談がある。
「勝山さんとしては、万が一、変われるものなら親御さんにどう変わってほしいですか?」と斎藤が尋ねている。
▼勝山……自分の人生を生きてほしいですね。子供にはもう構わないでほしい。親自身が好きなことをやってくれれば、子供はうれしいんです。母親がニコニコして自分のやりたいことをやってる、父親がやりたい仕事に熱中して楽しんでる、その姿を見たいんです。それで十分です。(pp.172-173)

世間の目や社会システムや親のプレッシャーが、ひきこもりから抜け出そうと焦れば焦るほどはまり込むという悪循環をさせてしまう。だから、親がとりあえず子供のことをほっといて、のびのびと自分の人生を生きているだけでも、悪循環が回避されることはある、勝山さんの案はすごい有効な解決策だ、と斎藤は言っている。

ひきこもりの8割が男性ということについて、勝山さんは「男にかかるプレッシャーのほうが大きいからでしょう。女の人には結婚という切り札がある。主婦としてひきこもりながら生きていける。社会復帰の必要もない。」(p.175)と言い、それに対して斎藤が図星だと言っている。
▼斎藤……いやあ、事実、主婦にはひきこもりが多いんでシャレにならないなぁ。誰とも付き合わないで、家事だけやっている女性って案外いるんですよ。たまたま夫がいるだけで社会性があると見なされてしまっているんですね。(pp.175-176)

ちょっと話はちがうけれど、自閉症は男児に多いと言われているが、それは男児を見いだしやすい診断基準によって女児が見逃されてきたのであって、自閉症の発現は性とは関連しないようだ、という堀江まゆみさんの話を思い出した。

(4/22了)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第44回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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