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ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪(今野晴貴)

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪
(2012/11/19)
今野晴貴

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著者の今野さんは、POSSEができた頃の話が『We』に載っていて、名前だけはずっと知っていた(「希望の持てる働き方をめざして」)。私もたまには『POSSE』(日本で唯一の若者による労働問題総合誌)を読み、いろいろ本も出してはるねんなーと思っていた。若いなーと思っていた今野さんも、ことしは30になるらしい。

タイトルの「ブラック企業」、かつては暴力団のフロント企業というイメージを持たれる言葉であったというが、今使われる一般的な意味は「違法な労働条件で若者を働かせる企業」ということになろう(p.11)、と冒頭にある。"若者"を取って、「違法な労働条件で働かせる企業」ではないかとも思うが、今野さんとしては若年労働問題に焦点をあてているから、こういう書き方になるのだろうか。

ともかくこの「ブラック企業」という言葉は、明確に企業の側の問題を表している点が、「ニート」だとか「フリーター」という言葉で"若者の側の意識や態度の問題"が語られてきたのと、違っている。

世の中の問題設定の仕方がそのようになっていたからということもあるのだろうが、POSSEが関わってきた労働相談の場面でも、明らかに企業の違法行為があってもなお、「自分が悪いのではないか」と不安がる若者が多かった、という。
今野さんは、ただブラック企業を見分け、そこへ入らないようにするという個人的解決だけでは不十分で、この「ブラック企業」が社会にどれだけの損失をもたらすか、社会として取り組んでいく必要があるのだと書く。それがサブタイトルの"日本を食いつぶす妖怪"にも表れている。

コンパクトにいろんなことが書いてあるが、"「キャリア教育」がブラック企業への諦めを生む"とか、"就職活動「支援」による「諦念サイクル」"など、会社というハコに入るためにぎゅうぎゅうとおこなわれているお導きは、結局のところは、就職活動をいつまでも続けさせ、若者の心を縛り、最後には諦めさせる、つまりは共通して現状のシステムの補完物になっている、というところは、多くの大学がおそらくこういう方向で学生を駆り立て、学生たちもまたひっしになっているであろうことが想像できて、そりゃ苦しいだろうと思った。

▼大学4年生の時点で思うような就職先が得られなければ、もう1度留年して就職活動を行う、まただめなら奨学金を借りて大学院へ進学する。それでもだめなら、いよいよ自分には能力がないのだから、どんな労働条件でも受け入れるしかない。非正規雇用でも、トライアル雇用でも受け入れるしかない、といういわば「諦念サイクル」がこれ等の「対策」によって、形成されている。(p.227)

ちょっと視野を広げれば、どう考えたって景気が悪いとか、わずかな椅子の椅子取りゲームで座れない人がほとんどだとか、そういう風景が見えないこともないのだろうが、いかに自分に力をつけ、いかに自分をPRしていくかという方向につっこんでいると、だめなのは自分、だめなのは自分、だめなのは自分…と、何度も何度もやられていってしまうのだろう。

「ほとんどの人は、ブラック企業の違法行為を追及してもブラック企業そのものを変えるという発想がない」(p.144、下線は本文では傍点)、「だから、本当に必要なことは若者が鬱病にされたり殺されたしまったりする前にブラック企業の体質を改善することである」(p.145、下線は本文では傍点)、と今野さんは説く。

そのために必要なのは、一人一人が戦略的思考を持つこと、そしてブラック企業そのものを変えていくためには、労働法と団体交渉を利用すべきだと。「何が正しく、何が権利であるのかは、すべて戦略的に主張し、争うことを通じて実現する」(p.236)のであり、「労働組合やNPOへと相談し、加入し、新しいつながりを作ること」(p.238)、さらには「労働法教育を確立し、普及すること」(p.239)だと。

「ブラック」な~、そうやったかもしれんな~と、自分の働き方を振り返りつつ読み、この先の働き方をもにゃもにゃと考えたりした。

(4/2了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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