読んだり、書いたり、編んだり 

文芸あねもね(東日本大震災復興支援・チャリティ小説同人誌)

文芸あねもね文芸あねもね
(2012/02/27)
東日本大震災復興支援・チャリティ小説同人誌

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「女による女のためのR-18文学賞」の受賞者などによるこのアンソロジーがおもしろかったと聞いて、借りてくる。もとは、2011年7月に、売り上げの全額を寄付する目的で、電子書籍で発売された同人誌で、それを紙の本として作り直したものだという。10人の、10作品が掲載されている。

「R-18文学賞」の人の作品は、電子書籍はまだ読んだことがないけど、紙の本で出ているものは、ときどきまとめて読んできた。けっこう、いいよなと思うのが多い。

『文芸あねもね』の10作品は、それぞれに、ちょっとぎょっとしたり、あーなんかわかると思ったり、そういう感情があるのかと思ったり、こりゃ栗田隆子さんのいう"「気持ち悪い」男"やなあと思ったりしながら読んだ。

収録作の中ではかなり長かった「真智の火のゆくえ」が、私には印象深かった。真智には、もしや「マッチ」が掛けてあったりするのか?と読み終わってからオヤジギャグのようなことも考えた。ものがたりの冒頭はこんなだ。

▼幼い頃から、思い描くのは火のイメージだ。
 人差し指と親指で、一本のマッチをつまんでいる。辺りは暗い。私以外には誰もいない、何も見えない。でも火は、照らすための火ではなくて、いつか放つための火だった。(p.159)
そして、ものがたりの終わり近くで、「私」は火から離れようとしている。

▼火の代わりに、私は、この感覚をなんとか持っていきたいと思う。今度は指ではつかみきれないから、両手を広げて、どーんと持って、それこそを、大事にしたり、人にあげたり、したい。
 でもどうだろう、私には無理かな、そんなの。
 と思ってしまう気持ちがないではないにせよ、とりあえず試みようと思う。私は、火の、燃えかすを見る。暗い水面に浮いている、焦げたマッチ棒を見る。火はなくなった。(pp.274-275)

「真智の火のゆくえ」は豊島ミホ作。

「ボート」という作品では、不妊らしき夫婦の、妻のほうが仕事に出た先での話が主だが、ものがたりの途中で、夫が妊娠に取り組もうとしてきた間の感情を語っているところが出てきて、『ヒキタさん…』なども読んだあとだったので、こんな気持ちもあるのかもしれないと思った。"やればできる"とか"がんばった人が報われる"みたいな発想に対する、怖さというか。たぶんその怖いと思う感情は、もっと広くあるような気がした。「働くのが怖い」という気持ちも、この夫の気持ちに似てる気がした。

▼「怖かったんだ。やってもやってもできない。じぶんが無駄に行為をして、無駄に射精して。役にたたないことして、役にたたないもの排出して。役にたたない、無駄に、生きてるんだって考えると、怖かった。またやって、またできなかったら、またじぶんが無駄なんだとつきつけられるみたいで。本も。本を読んだら、そこに答えが書いてある気がして。無駄なんだ、て大きく書いてある気がして」(p.411)

この「ボート」は、三日月拓(みかづき・ひらく)作。

まだ読んでない「R-18文学賞」の人の作を、まとまって読みたいなと思った。

(3/20了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第40回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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