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書店ガール 2 最強のふたり(碧野圭)

書店ガール 2 最強のふたり書店ガール 2 最強のふたり
(2013/03/19)
碧野圭

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『書店ガール』が文庫になって、ぐっとおもしろくなっていて、たまたま翌日、本屋をのぞいたら『書店ガール2』が並んでいて、しばし迷ったのちに、買ってきて読む。

ペガサス書房に辞表を出した理子と亜紀は、2人して別の大手書店チェーンの新興堂書店に転職する。理子は、この大型書店の店長に、亜紀は文芸担当として、仕事を始める。理子は、大きすぎるほどの書店で自分の役どころは…と思案し、亜紀は妊娠がわかって、こちらもいろいろと問題が発生する。

とくに、亜紀の夫の伸光は、「子供が3歳になるまでは母親の手で育てた方がいいっていうのは、常識だろ?」(p.95)とぬかす男なのだ。
▼「母親になったんだから、いままでどおりにはいかない。それは当然のことじゃないか。仕事には代わりはいるけど、母親の代わりはいない。数年でいい、亜紀には子供を一番に考えて行動してほしいんだよ」
 「だけど、どうして私だけ? 私はいままでの生活を180度変えなきゃいけないのに、あなたはどうするの? あなたも父親としていままでの生活を変えてくれるの? 子供のために残業を減らしたり、呑みに行く回数を減らしたりできるの? 病気の時には休みを取ったりしてくれるの?」(p.96)

そんなの無理だ、うちの会社は競争が激しいしと言う伸光に、「だから、子供ができても自分は生活を変えないっていうの?」おかしいじゃないと亜紀は言うのだ。自分は気の向いたときだけ父親をして、私には100パーセント母親であることを要求する、それは不公平だと。

亜紀がちょっと無理をして店で梯子から落ちたとき、病院にとんできた夫の伸光は、こんな状況で仕事を続けるのはかえって迷惑ではないかとまでいって、亜紀を仕事から離そうとした。それに対して理子が言ったことばが光る。

▼「…私は自分の店が、子育てしている母親のひとりも受け入れることのできない、ゆとりのない職場にはしたくないのです。効率だけが優先される職場は楽しくないし、やり甲斐もない。愛着も持てない。そういう店ではみんな必要以上の仕事はしないし、チームワークも育たない。それはお客様にも伝わるし、結果的には売り上げも上がらないのです」(p.124)

そんな折り、あるコミック雑誌の回収騒動が起こる。その雑誌の編集長だった伸光は、異動させられることになった。会社はそんなもんだと言いながら、コミック編集をやっていきたかった伸光は鬱屈する。そこに風穴を開けたのは亜紀だった。転職という選択肢もあるのだと考えはじめた伸光に、ひどい会社にしがみつくことないし、若いんだからチャレンジすればいい、たとえ失敗したって、残りの会社員人生を鬱々と過ごすよりすっきりするじゃない、「私だって働いているんだし、いざとなったら私が伸光を養うから」(p.220)と。

この『2』の話のなかでおもしろいのは、このちょっとずつ風が通って、変わっていく伸光の姿かもしれない。

そして、亜紀が産休に入るまえに企画したイベント「50年後も残したい本」。近隣の書店7店舗と合同での実現したこのフェアも、企画段階の話し合いでは、理子の店のような大型店と、中小店との間のあつれきもあった。その中で、理子はこう言った。

▼「ここにいるみなさんは、それぞれ書店というフィールドで闘っている。その敵は何か。ネットショップとかコンビニとか新古書店とか電子書籍とか、我々を脅かすものはいろいろあるけど、一番の敵は本に対する無関心さだと思う。本を読むことが面白い、本屋に行くことが楽しい、そういう想いを人々が失ったら、私たちの仕事はお終いだ、そう思うんです。私がこうした企画を考えたのは、少しでもそういう状況に逆らってみたいと思ったから。それもひとりでやるより、多くの書店が集まってやった方が、たくさんの人の関心を引き付けることができると思ったから。面白いフェアになると思ったから。それだけなんです」(p.268)

本て、何やろう。インクのしみのついた紙の束というかたちで、伝えられるものは。そして、読んだ者には、何が残るのか。

たとえば理子が手にした、42行の詩がひとつ載っているだけの、本。

▼…白いページに、たったこれだけのことしか書かれていないから、言葉の持つ強さや優しさが際立つのだ。言葉にたどり着くまでの白いページも、ところどころそっと添えられたイラストも、すべて言葉を引き立たせるために必要な装置なのだ。
 やられた、と思った。
 これが、本だ。
 書かれた言葉のひとつひとつをじっくり味わうための。何度も行きつ戻りつして、言葉を確かめるための。
 本というのはそのための最適のパッケージなのだ。(p.233)

本屋という仕事について、理子がこんなことを考えた場面も、こころに残る。

▼いま、自分の店には50万冊の本がある。その中で、50年後にも売り続けられる本は何冊あるのだろう。1割あるのだろうか。ほとんどはどこかに消えてしまうのだ。そう思うと、気が遠くなるような思いになる。自分たちのやっている仕事が、ものすごい徒労のようにも思える。
 だけど、消えてしまう本だから価値がないわけじゃない。50年経っても、こうしてその本を覚えている人はいる。何がその人にとって大切な本であるかなんて、その人じゃなきゃわからない。文学的には軽く見られるケータイ小説だろうとライトノベルだろうと、大事に思う人はいるのだ。その本に会うことでこころが慰められたり、人生が変わったりすることだってあるのだ。
 お客がその1冊に出合うための手助けを、我々書店員はしているのだ。(p.69)

企画を立て、フェアをやったとして、書店業界の状況が劇的に動くことはないだろう。それでも、やると楽しめそうだし、きっと楽しい。「楽しいと自分たちが信じることをしなければ、お客さんに本や本屋の楽しさは伝わらない」(p.269)と理子は思う。

自分たちが喜びを見出せることを、やっていく。それを一つひとつ積んでいくことから、何かが、伝わっていくのかもしれへんなとここを読んで思った。

(3/19了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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