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長い終わりが始まる(山崎ナオコーラ)

長い終わりが始まる長い終わりが始まる
(2011/10/14)
山崎ナオコーラ

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こないだ読んだ『…二人組…』がおもしろかったので、山崎ナオコーラの別の小説を借りてみる。

大学のマンドリンサークルで、楽器の演奏にうちこむ小笠原は、4年になって申し訳程度に就職活動もやってみるが、ぜんぜん身が入らない。小笠原は演奏をよりよいものに仕上げたいと思っているが、サークルのみんなは音楽を極めることよりも、仲良く「友だち作り」をしたあと「思い出づくり」をするのが目標なのだ、と小笠原には感じられる。だが、同じサークルの田中だけは違う、音楽をやりたいはずだ、と小笠原は思っていた。

田中が指揮者のDVDを見せてあげるというので、駅でおちあった。「後ろに乗って」というので田中のママチャリの荷台をまたぐと、田中は「女の子は普通、そういう風に座らないから」(p.27)などと言う。しかたがないから小笠原は横座りに直す。ここを読んで、はいはい、私もそういう風には座らないよと小笠原に親近感がわく。

田中のうちで、指揮者のDVDをみて、駅前の焼き鳥屋で軽く食べたあと、田中が「泊まってけば?」と言う。何もしない、母親は今日は仕事で帰って来ない、と言う。

ベッドで並んで寝て、田中が何もしないことはなくて、ギューギューと舌を吸い込まれ、「これ、脱ぐ?」と言うので、小笠原が自分で脱ぐと、「女の子は普通、自分では脱がないよ。」とまた田中は言うのだ。

なんやねん、「女の子は普通…」って。
「入れてみる?」とか、入らないとか、しばらくすったもんだした挙げ句、「諦める?」と聞かれて、小笠原は田中の上から下りた。

▼セックスって、いつが終わりなのか、分からない。小笠原が田中のことを好きな間は、日々を越えて続いていく行為なのだろうか。まだ終わっていない、と小笠原は感じる。(p.56)

そして小笠原は、こうも考えた。
▼この間泊まっていったときにやったことが、一般的にセックスと呼ばれるほどのことなのかどうか、小笠原にはいまいち自信がなかったが、一ヵ月ほどしてから気になることができた。処女膜というものはセックスをしたことがない人でもスポーツなどによってすでに破れていることがあるということや、射精しなくても少しでも挿入したら妊娠の可能性はゼロではなくなるということを、小笠原は聞いたことがあった。その確率は非常に低い、と頭では分かっているが、心は不安になる。そこで妊娠検査薬を薬局で買って試した。相手は恋人ではないのだから、孤独だった。
 一週間遅れて生理が来たとき、小笠原は思わずセブンイレブンで、インスタント赤飯を買ってしまった。電子レンジで温めて食べた。(pp.73-74)

そして、なんやかやがあって、小笠原のアパートで、田中と小笠原は、また一緒に寝る。小笠原は、田中の言動に「女扱い慣れ」を発見したり、男の子は謎の生き物だと思ったりする。

▼小笠原はエロDVDを見ないので、こういうときの文法が分からない。カフェでの会話や道で擦れ違うときの雑談ならば、他の人たちの遣り方を盗み聞きすることもあるし、映画や本でも馴染んでいるのだが、こういうシーンで他の人たちの遣り取りは聞いたことがない。しかし、部屋に籠ったときに、女と男の二人だけで言葉を発明できるはずはないので、やはり小笠原と田中も社会のコードにしたがってセックスしているのに違いない。
 そのあと、田中が再び上に乗った。そして、小笠原の足を持ち上げて、中に入れようとする。避妊したい、と怖くなったのだが、やはり言えない。この年になってもコンドームのことを口に出せない自分がふがいなくて、なんとか上手い表現はないものか、と頭の中で探ってみた。セックスと呼べる行為を自分ができている自信が、やはり湧かない。「これで合ってる?」と田中に聞いてみたいところだが、どうしても聞けない。(pp.148-149)

田中が膣外射精で小笠原の腹の上に出したあと、小笠原は「面白かったね」と言ってみるが、田中は不満げだ。田中としては、最後の所は「失敗」らしい。

▼どういう状態になったときに「セックスが終わった」と言うのか。やはり分からない、男にゆだねたくない、私も参加したい、と小笠原はしつこく思っていた。男のタイミングで終わらせる気はない。(p.151)

そのあとも小笠原は思う。「男の生理感覚に偏って成立しているセックス文化は、おかしい。射精でなんか、セックスは終わらない。」(p.155)と。

この本のあとに、『ヒキタさん…』を読んで、『生殖技術』を途中まで読んで、セックス=性交ではない、とふと思った。不妊への対処もタイミング法のうちは性交だが、そのあとの精子をちゅーっと入れるとか、顕微授精とかいう段階は、卵子と精子の合体作戦に、身体は介在しなくなる。

性交ということばには、生殖とか配偶子の接合とか、生物学的な方面へのびていく感じがあるが、生殖技術がすごくなると性交からは離れていくところは、なんか不思議な感じがする。

小笠原の話を読んでいると、射精でなんかセックスは終わらない、ならばどこから始まって、どこが終わりなんやろと、いろいろ考えてしまった。

(3/14了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第39回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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