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日本のいちばん長い日―運命の八月十五日(半藤一利)

日本のいちばん長い日―運命の八月十五日日本のいちばん長い日―運命の八月十五日
(1995/06)
半藤 一利

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さいきん、「きんどる」とやらで読書(それは「書」なのか?)している同居人が、全然知らなかった、知ってましたかという。無条件降伏による敗戦を阻止し、徹底抗戦するのだというクーデター計画があったことや、玉音放送をやめさせるために、終戦の詔勅を天皇が読みあげた録音盤が奪取されようとしたことは、私は何かで読んですでに知っていた。

半藤一利のこの本だったのかなと思ったが、ちょっと話していると、同居人が「いや、それだったら、この本読んでない」というので、「きんどる」には同居人がだうんろーどした電子書籍があるとはいえ、紙の本のように貸し借りする風でもなくて、私は図書館の本を借りてきて読む。

序が大宅壮一になっているところを読んで、そういえばこの本が最初に出た頃、半藤は文藝春秋の一社員で、大宅壮一名義で出た、というのをどこかで読んだなあと思った。

長めのプロローグのあと、1945年の8月14日の正午から15日の正午まで、1時間刻みで、長い長い日が書かれている。7月下旬から、ポツダム宣言の無条件降伏を受け入れるか否かについては、国体が護持されるのかどうかで議論が続き、政府は決められないままに、広島に原爆投下、そして長崎に原爆投下、各地の空襲もあった。閣議では同数で決められず、天皇の「聖断」をあおいで、ポツダム宣言受諾が決まった。

読んでいて、私が気を引かれたのは、昭和天皇がこのとき44歳だったということだ。いまの私とひとつしか違わない。
天皇は、わが身がどうなろうとも、民草を無意味な犠牲から救うためにはこの手段しかないと、ポツダム宣言の受諾に同意だと発言した。このお上の御意に従うべきなのだという流れができようとするが、一方で、天皇は君側の奸によって誤った選択をさせられているのだという者たちがいた。

ポツダム宣言受諾をさせまいとするクーデター計画がいくつかあった。陸軍省幕僚の一部と近衛師団の参謀が宮城を占拠しようとした事件、厚木三〇二海軍航空隊が玉音放送後も徹底抗戦を呼びかけた事件、皇軍に降伏の二字なしと徹底抗戦をとなえた国民神風隊が横浜高等工業学校の学生をまきこんで首相官邸や閣僚らの私邸に放火した事件など、時のめぐりあわせか、それらは散発的なものに終わって、大きな流れにならなかった。けれど、歴史の「もし」はあったかもしれないと、1時間刻みで描かれる「史実」を読みながら思った。

厚木三〇二航空隊では、司令室に全士官が集められて、司令の小園大佐が、日本はポツダム宣言を受諾し無条件降伏をするという情報を伝えた。司令の真意をたずねる若い士官たちに、小園司令はこう叫んだという。
▼「私が司令の職責を汚すかぎり、厚木航空隊は断じて降伏しない。すでに高座高廠も、工作機械を地下に移し、持久戦の準備をおえた。食糧も二年分はあり、たとえ全海軍から見放され孤立無援になり、逆臣の汚名を一時冠せられようと、国体を汚し、伝統をうけつがぬ無条件降伏には賛同しない」(p.170)

この叫びに士官たちの熱情はかき立てられ、厚木基地は全軍一丸となって徹底抗戦の籠城を策することになった。私はここを読んで、二年分の食糧がこういうところにはあったのかと思った。

自決の決意をかためた阿南陸相の陸相官邸での最後の晩餐の場面で「日本酒とわずかばかりのチーズが」というところに、そういうものはあるとこにはあったんやなと思う。

綿密な取材と当事者の証言によって書かれた24時間。この本に出てくるのは、氏名、役職や階級がはっきりとしていて、写真なども残っている人なんやなと思った。そして、とりわけ陸軍をはじめとする軍隊の士官たちの言動に、戦時下に筋金入りで育つとこうなるんやろうか、それとも…と考えてしまった。

(2/20了)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第39回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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