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円卓(西加奈子)

円卓円卓
(2011/03/05)
西加奈子

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これも「ブックマーク」の本のアンケートで書かれていた本。小学3年の「こっこ」こと渦原琴子(うずはらことこ)という、もしかしたらフツーの発想では理解できへんかもしれへん子どもが主人公。

例えば、こっこは、眼帯をして登校してきた級友・香田めぐみさんへの憧れを、人一倍胸に秘めている。
▼ものもらいという病気を患ったら、あの、白くて格好のいい「がんたい」を、目に装着することが出来る。そして片方の目だけで、世界を見ることが出来るのだ。
 こっこは言いたい。
 わたくしにちかづいたら、うつるのよ。どうか、ひとりにして。(p.5)

先生の隣で三角座りをして、体育を休む香田めぐみさんのその場所に、こっこも座りたい。片目だと遠近感が分からないという先生の説明はよくわからないが、そのわからなさもまた魅力に思える。
▼こっこは、あそこに座りたい。みんなと私は違うのだということを噛みしめながら、片方の目だけで、みんなを見つめていたい。
 えんきんかんが分からぬことなど、皆様には理解できないでしょう。いいのです、放っておいて、ひとりにしてくださいませ。(p.7)

こっこは、幼なじみのぽっさんの話し方にも心底から憧れている。吃音のぽっさんの話し方は、歌を歌っているような、何か大切な説教をしているような、独特の、格好良いリズムがある。こっこは事あるごとにその話し方を真似てみるが、ぽっさんのように格好良くはいかない。
こっこは、朴君の不整脈も羨ましい。ちょっとしたパニックの症状らしいという担任が説明した言葉に完全にとらわれた。そして、うう、うううと教室の真ん中で、朴君のように苦しい苦しいと真似してしゃがみこんだ。それを担任に「お前はちゃうやろ」と言われて、こっこはめっちゃ恥ずかしさを感じた。なんでや。

朴君の家へ数人で行ったこっこは、「死ぬかと思ったなんて、めっちゃ格好ええやん」「死ぬかと思うことなんて、普通ないやん」と羨ましげな発言をして、朴君に、ほんまに苦しかったんや、もう二度と嫌やと言われ、なんでじゃと思う。

そのことを、ことこはぽっさんと話す。
朴君の不整脈が羨ましくて真似したのが、なんで怒られるのかわからんと言うこっこに、ぽっさんは諭す。
▼「ば、馬鹿にしてるように、お、思う人も、おるからや。」
「馬鹿になんてしてへん。うちは、ほんまに、不整脈になりたいんや。」
「こ、ことこの気持ちは、分かる。お前は、ば、馬鹿にしてへん、て、お、俺やったら知ってる。でも、そ、そういう風に思てまう人も、お、おるんや。あんとき、ぱ、朴君はおらんかったけど、め、目の前で、ことこが、不整脈とち、違うのに、苦しい、真似しとったら、ぱ、ぱ、朴君は、嫌な思いをしたかも、せーへん。」
「なんでじゃ。うちは、羨ましいから、やってるのに。格好ええ人の真似するのんが、あかんのけ。」
「お、お前は格好ええ、と、お、思うかもしれへんけど、ふ、普通の人は思わへんのや。ふ、不整脈のひとは、しんどいなぁ、て、思てはるんや。」
「普通の人はそう思てはるかしらんけど、でも、うちは、格好ええと思うねん。苦しい、死ぬくらいに苦しい思いするなんて、滅茶苦茶格好ええと、思うねん。」(pp.109-110)

ぽっさんは、昔、こっこが、ぽっさんの話し方を真似して、幼稚園の先生にめっちゃ怒られたことを引き合いに出す。
▼「お、俺はな、お前が、こ、心から、俺、俺のことを、格好ええと、お、思てくれとる、て、分かって、それで、うれしかったんや。で、でもな。」…
「そ、それは、お、俺が、お前のこと、よう知っとるからであって、な、やっぱり、真似するんは、ふ、普通は、あかん。」…
「お、俺の話し方はな、き、吃音いうてな、世の中では、あ、あかんことと、されてるからや。ふ、不整脈と一緒や。け、健康な人が、あかんことを、ま、真似するんは、あかん。馬鹿にしてると、お、お、思われるんや。」(pp.110-111)

こっこは、吃音のことはぽっさんから聞いて知っている。でも、なんであかんことなのかがわからん。こんな格好ええやんか!と思う。
▼「お、俺は、お前が、そ、そう言うてくれるから、じ、自分のこと、格好ええって、思えるようになったんや。で、でも、それまでは、お親も、俺の、は、は、話し方を、な、治そうと必死やったし、人に、き、聞き返されるんが、嫌やった。」
「そうなんや。」
「そ、そうや。お、おかんも、俺のこと、可哀想に、て、思てはった。お、俺は、そういう風に思われるんが、い、嫌やった。」(p.111)

「ことこが、ほんまに格好ええと思てても、本人はものすごく嫌に思ってることも、あるねん」と教えてくれるぽっさんの言葉を、こっこは聞く。香田めぐみさんの、ものもらいの真似、朴君の不整脈の真似、ぽっさんの話し方の真似…真似したら怒られることと、真似しても怒られへんこととの違いが、こっこにはわからへん。

ものもらいの眼帯は真似しても怒られへんかもしれへん、不整脈みたいに死ぬほどしんどくないから。でも、ぽっさんの吃音は死ぬほどしんどいわけやないけど、真似したらあかんと言う。

ぽっさんは、「本人が、それを、どれだけ嫌がってるかによるんと違うか」と言う。本人が嫌がってるか、格好ええと思ってるか、それはどうやったら分かるのか。「想像するしかないんや」とぽっさんは言う。祖父の石太は、「いまじん」やと言う。イマジンは、年取ったら分かってくることもあると言う。

相手がどういう思いでおるか、「分からんかったら? うちはあかん人け?」(p.116)

こっこみたいに感じて、考えて、ものを言う子は、いろいろとタイヘンかもしれへんと思う。祖父の石太は、「きっと彼女の行く末は、なかなか、困難なものになるだろう」と思う。

大家族の渦原家で、こっこは、祖父母と父母と三つ子の姉と8人で住んでいる。そのたくさんの家族もあれこれとこっこにかかわり、そのことも、この小説には出てくる。孤独になりたいと願うこっこだが、いつも、こっこのそばには誰かがおるなあと思う。

こっこの学校の保健室の先生がレズビアンで、カミングアウトはしていないが、学校中の教諭がそれを知っている、というのが途中でさらっと出てくる。そのさらっと具合がビミョウな気もしつつ、存在がみえるのはやっぱりええんかなと思った。

(2/18了)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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