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闘う区長(保坂展人)

闘う区長闘う区長
(2012/11/16)
保坂展人

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保坂展人というと、いじめとか不登校とか学校へ行くばかりが能じゃないというような本を書いてる人、という印象がずっとあった。衆院選で比例復活で当選したときには、選挙区での得票率が低くて供託金を没収されたという話も記憶にある。

2年前の春に、保坂は世田谷区長になった。この本にもあるように、区長選に出るに至ったその始まりは「3・11」だったという。

世田谷区の人口は88万人、非常勤や周辺で働いている人を含めれば1万人近い人たちの仕事で区政は運営されている。
▼首長の判断によっては、多くの市民、住民たちの命や安全に大きな影響が出る。平常時には、たんたんと仕事は流れて行くかもしれない。日常のひと時は、住民は首長に命を預けているつもりなどないだろう。けれど、あの3・11の状況を考えればよく分かる。いざなにかが起きた場合、首長の判断が、人々の命や安全に大きな影響を及ぼすことになる。それをまざまざと見せつけたのが「原発事故」でもあったのだ。(pp.45-46)
就任して最初の方針説明で、保坂はこういうことを語った。

▼「行政の仕事とは継続です.日常業務は、だれが首長になろうと、同じようにこなしていかなければなりません。その意味で、これまでの区政の95パーセントは継続します。だから、どうか95パーセントは安心して従来どおりの仕事を続けていってください」「けれど、100パーセントがこれまでと同じということではありません。5パーセント分は、常に新しいことに取り組む領域を切りひらいていかなければなりません。その5パーセント分は、大胆に私の感覚で取り組ませていただきたい」(pp.48-49)

そして、区長としての仕事のなかで、区長の最終了承を得るために上がってきた案件についても、必要と思えば、保坂は自分の意見をつけて現場に差し戻した。決裁ルートの逆流はこれまでほとんどなかったが、こうして保坂は、自分の方針を伝え、理解を求めていこうとした。

▼「一度決めたことは変えられない」という発想に対して、私は「そのままでいいのかな?」と緩やかな疑問を差し挟む。…状況の変化には柔軟に対応するべき。私はそのあたりの意識改革を職員の方々に求めていった。(p.54)

世田谷での「超高線量放射線騒動(民家の床下にあったラジウム瓶から高線量が出ていた))」を経て、保坂は情報発信の大切さについて教訓を得る。

▼今回の原発事故対応で、電力会社や政府が誤ったのは、「情報の真偽を確かめる」「国民のパニックを防止する」などという理由で情報を抑え、結果として隠蔽し、或いは事態を楽観的に見る情報を流したりしたことだ。国民は正しい情報を得られればそれをもとに判断し、行動を取る。私が、今回の騒動で得た教訓である。
 そこで得た教訓はもう一つ。緊急時には、区長と職員との関係が問われる。火事を消すにはチームプレーが不可欠で一人だけ突出して走るわけにはいかない。行政組織を緊急事態に対応させていくには、分担と責任者を明確にして、正確な情報を共有して動くことが大切だ。職員一人ひとりの当事者意識を最大限発揮してもらうためには、指示もあいまいな点はただしてシンプルなものにするということだ。(p.63)

「東京電力とのバトル」(4章)、「電気料金値上げのトリックを見破る」(5章)、「「世田谷電力」とエネルギーの地産地消」(6章)の話も、各自治体で何ができるのか、大きな電力会社はどんだけ横柄で恫喝的なのかがよくわかって、自分の住む自治体と関西電力のことなんかを考えながら読んだ。

さいごの章の、無作為抽出した区民1200人に「ワールドカフェ」への案内状を送って、約1割の人が「参加してもいい」と返事、最終的には18歳から70歳までの90人が参加し、若手職員とともに「ワールドカフェ」で議論を深めた、というのがおもしろかった。

▼非常時に、結局、カギになるのはコミュニティーの力。しかし、この催しに参加している人たちの多くは、あまり町会や自治会との関わりを持っていなかった。地域の自治会などの大切さは分かるけれど、特定の人たちが親しくやっているようで、新たにはどうも入りづらい。どうすれば親しみやすいコミュニティーをつくることができるかが話題となる。(p.165)

広報紙やチラシを見て申し込んでくるような人ではなく、無作為抽出した区民に呼びかけた中での1割の参加。おそらくこの人たちは、どこの自治体でもマジョリティであろう住人だと思う。そんな人たちとの区政やコミュニティについての話し合いが盛り上がったという話に、まだいくらでも人の力を掘りおこす可能性はあるんじゃないかと思えた。

(2/11了)
 
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第40回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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