読んだり、書いたり、編んだり 

僕らのご飯は明日で待ってる(瀬尾まいこ)

僕らのご飯は明日で待ってる僕らのご飯は明日で待ってる
(2012/04/25)
瀬尾まいこ

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瀬尾まいこは、出たら読むのだが、むかしと違って、この頃は図書館でだーっと予約がついて、なかなか借りられない。「ブックマーク」でも紹介されていて気になっていた本にやっと空きができていて、借りてきた。いろいろ立て込んでいたので、(1章だけ…)と読みはじめたのに、結局さいごまで読んでしまった。

4つの章からなる連作は、高校3年で同級だった「俺」=葉山亮太と「上村」の話から始まる。教室ではいつも外を見てたそがれていた俺に、体育委員の上村は声をかけてきた。そして、誰もなり手のなかったミラクルリレーの米袋ジャンプに、俺は出ることになった。

俺は、高校に入って以来、昼休みはもっぱら読書で過ごしていた。
▼読書は一人でいるためのいい言い訳になる。本の中に入っているふりをしていれば、周りをシャットアウトできる。それに、読んでみると本も悪くなかった。中には、現実とは違うところに連れていってくれる本もあった。(p.13)

死んだ人の出てくる小説ばっか読んでいたのは、それが何かヒントを与えてくれるかもしれないと思って。でも何冊読んだって、俺の知りたいことは出てこない。
▼俺が知りたいのは、たぶんもっと具体的なことだ。死んでしまった人の持ち物を使っていいのかとか、家族の会話にどれくらい乗せていいのかとか、友達に公表すべきかそれとも聞かれてから答えるべきかとか。そういうのが決まっていたら、簡単なのにと思う。そして、もっと率直な答えを知りたかった。いつまでこの重苦しい日々が続くのか、どうすればこの重みが軽減されるのか、はっきりと導いてほしかった。(p.14)

授業中にはたそがれ、昼休みには本を読んで、いつも一人でいた俺に、上村はあれこれと話しかけてきた。そして、米袋ジャンプで一位になったとき、「好きなんだ、付き合ってくれるの?」と告白してきた。俺はどうしていいかわからなくて、断ったような具合になって、それからしばらくして、「好きになるのが怖いんだ」と上村に話した。そんな気持ちになってしまうのは、兄貴の死のせいか。

上村は、そんな俺を、ひっぱりだしてくれたのだ。あんなに沈んでいた俺が、脱出できたのは、上村のおかげだ。
▼わざわざ一人になろうとしなくなって、俺はずっと一人だった。ついこの間までたくさんの時間をかけて自分の中にこもっていた。周りを遮って死んだ人の出てくる小説ばかり読んでいた。でも、何もわからなかったのだ。自分にだけ心を向け、自分自身と対話していたのに、答えにかすることさえなかったのだ。…
 あの時、上村が俺に声をかけてくれた。だからほんの少し未来が見えたんだ。一人で悟ってみたところで、わかることはせいぜい知れている。(pp.84-85)

俺は高校を出たら働こうと思っていたのを、上村の助言であっさりやめ、上村が行くという短大に近いという理由で大学を受験した。上村と付き合いはじめて、大学に入ってからもその付き合いは続いた。

上村が短大を出て、ある日、俺は上村の家で夕飯を食べて、それから数日後、俺は上村から「もう付き合うのやめよう」と言われる。どうして別れることになったのか腑に落ちなかった俺に、後日会った上村は「太陽みたいな人と付き合わないとって、おばあちゃんに言われたんだ」と告げる。上村は両親がおらず、祖父母に育てられた。おばあちゃんの言葉は日本国憲法より重く、おばあちゃんの言うことは破れないという上村。

上村にふられて、俺はそれから鈴原さんと付き合って、うまくいっていた。けれど、上村から別れの理由を聞いたあと、上村のことを思い、そして鈴原さんと別れた。
▼どちらを好きかはわからない。でも、明白なことがある。俺は上村のことなら、手に取るようにわかった。上村が何を考えてどう行動するのかだいたい想像できた。…
 こんなの恋愛感情じゃないのかもしれない。だけど、勝手にわいてくる気持ちが、何に当てはまるのかなんてわからない。ただ上村のことを思ってる。それだけだ。(p.146)

大学を出てから二年足らずで、俺と小春(上村)は結婚した。
▼こんなふうに自分たちで未来を思い描いて、それに自分たちで近づくことができる。そしてすぐそばにその未来が待っている。全部が思いどおりにはいかないだろうけど、それでも少しずつ形づくっていける。こういうのを幸せっていうんだ。そう思っていた。(pp.164-165)

小春にみつかった子宮筋腫。筋腫があるのはポピュラーなことだが、小春のそれは悪性の肉腫の疑いがあると診断された。自分の筋腫のことや、同居人がむかし悪性の肉腫かもと言われたことや、そんなのをちょっと思い出しながら読む。「自分の子ども」って何やろうとも思った。

手術を受ける小春とむきあいながら、俺は、死んだ兄貴が言った言葉や、兄貴と交わした言葉を思い出す。
▼兄貴も何度も同じようなことを言っていた。…どうすれば病気にならずにすんだのかって、どうして俺なんだって。そして父親も母親も俺もうまく答えることができずに、ただ兄貴の気持ちが収まるのを待つしかなかった。…
「こうなるのが怖くて、俺、兄貴の心に触れるものをまったく含まない話しかしなくなってた。病気のことはもちろん、兄貴自身にかかわることも口にできなかった」
 うらやましくなるから学校のことは話さないほうがいい。未来のことなんてとんでもない。兄貴をほめたって卑屈にさせてしまう。何の話だったら兄貴は平気だろう。そうやって選びぬいた話は、本当にくだらなかった。
「毎日どうでもいい話ばかりしてたな。きっと兄貴だって、聞いててつまらなかっただろうな」
 思い出すと、悲しいのになんだか笑えた。(p.183)

死ぬということ、死んでいくということ、それを、近しい人とどうやったら話せるか、俺や小春の話を読みながら、そんなこともじーっと考えた。

(2/6了)
 
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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