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ごきげんな裏階段(佐藤多佳子)

ごきげんな裏階段ごきげんな裏階段
(2009/10/28)
佐藤多佳子

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『サマータイム』を読んだあと、図書館にあったのを借りてみた。佐藤多佳子の初期作品集。アパート「みつばコーポ」の裏階段に、フシギなイキモノがあらわれる話が3つ。

こういうヘンなものと出会うのは子どもだけかというとそうでもなくて、親の目にも見える。そこが新鮮。子どもも大人も、ヘンなイキモノと過ごした時間の後で、ものの見方とか行動とか、ちょっとずつ変わっている。そんな話だった。
第1話は「タマネギねこ」。学とくるみの306号室にはいりこんだノラ猫は、なぜか生タマネギをかじる。両親には飼えないといわれ、学は裏階段にノラを放す。ある日、裏階段にはうじゃうじゃとタマネギが鈴なりで、ノラがせっせとたまねぎをかじっていた。けれど、10分後にお父さんをひっぱっていったときには、タマネギもノラもすっかり消えていた。

そして306号には子猫のからだにタマネギの頭がついたイキモノがあらわれた。猫のようにミューミュー鳴きもするが、このタマネギ猫は人間の言葉もしゃべる。306号にいついた猫は、くさりかけたタマネギのようなたまらぬにおいを発しては、シャンプーされ、そのたびに小さくなっていった。大福ぐらいになり、ビー玉ぐらいになり、シロアリぐらいの大きさになって… オニオンスープにぽちゃんと落ちて、それきり猫の姿は消えてしまう。

次の日、裏階段にいた金茶の子猫は306号に連れ帰られ、ノラが戻ってきたとみんな大喜び。学の母さんは「まあ、なるようになるでしょう」「ノラをないしょで飼ってみましょうよ」と言うのだ。管理組合の理事長・有沢のおばばの目をぬすんで。

第2話の「ラッキー・メロディー」では、笛を2本もった、しゃべる蜘蛛があらわれる。両親の旅行のあいだ、212号室のおじさん宅に居候している一樹は、下手なリコーダーの練習をよそでやれと言われて、裏階段へ。そこで練習していたら、蜘蛛から「へたっぴ」と言われてしまう。蜘蛛は、笛の吹き方を教えてやろうかと言い、実際に自分が笛を吹いてきかせる。

一樹の音楽のアリババ先生は、なんとそのアパートの管理組合の有沢のおばばだった。「ちょっとウチへいらっしゃいよ。笛てあげます」と言われて、一樹はしぶしぶアリババ先生の部屋へ。「練習しないから下手なんじゃなくて、練習しても下手なのかね…」と一樹の練習をみてアリババ先生はつぶやく。

笛吹き蜘蛛に手伝ってもらって、笛のテストはうまくいった。だけど、先生をだましたようで気分がわるい。両親が帰ってきて、一樹は家へ戻り、蜘蛛は裏階段に戻った。いやみな蜘蛛は「またテストに協力してやろうか?」と言うのだが、一樹はリコーダーをせっせと毎日練習している。今度のテストまでにはなんとかあの蜘蛛と同じくらいうまくなってやるのだ。

第3話「モクーのひっこし」では、とうの昔に使われなくなって蓋をしてあったアパートのダストシュートを、ナナとパパがこじあけたら、そこから「煙男」があらわれる。「腹がへった、煙草の煙が食いたい」とさわぐ煙男に、パパは煙草に火をつけて、フカフカと煙をはいてやった。

アパートの住人も次々と禁煙して、どこも魚なんか焼かなくなって、けむりおばけのモクーは腹がへって仕方がない。とうとうママにもみつかって、「あなた、もう、煙草は一本も吸わないでちょうだい! 煙草なんて吸うから、あんなバケモノにつけこまれるのよっ」と言われてしまう。

「モクーは引っ越しさせよう」と、パパは知り合いがやっている煙もくもくのスナックへモクーを連れて行く。そこの強力なエア・クリーナーとして、モクーはばくばくと煙を食い、さらには煙でいろんなもののかたちになってみせる"煙のファンタジー"芸も披露することに。

モクーの芸をみたママはすっかり意見がちがってきて「ケムくさえなかったら、いいお店だわ。あの煙の芸当はおもしろいわ。もう一度見たいわ」とまで言うようになった。けれど、もくもくしなくなったスナックは、どうも気分が出ないと、モクーはお払い箱になって、また310号のナナの家へ戻ってくる。

そのモクーが食べられる煙をさがしてナナのママはくるみのママとしゃべっていて、そして子どもどうしは「すごい話」をお互い聞かせようとして、310号へ向かうところで、物語は終わる。

もしかしたら、その310号室に、有沢のおばば=アリババ先生もあらわれたりするだろうか、モクーを見たら管理組合の理事長としてはどう行動するだろうかと、終わった話のあとをちょっと想像する。

学やくるみの母、そしてナナの母の言動がなんだかおかしい。アリババ先生も正論だけでないところがイイ。『団地ともお』で、建前ふっとばして私はゴキブリ嫌いなのと叫ぶ先生を思わせる。

(2/3了)
 
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みつばコーポラスの裏階段で起きたこと3つ。 人気作家初期の連作短編集。   「タマネギねこ」 小村学が裏階段で見つけた茶トラの猫。 ノラと名づけて飼うことにしたのだが、みつばコーポラスはペット禁止。 不思議なことにこのノラはタマネギを食べる。 そして洗うと…
2014.05.18 18:04
 
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第44回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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