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桐島、部活やめるってよ(朝井リョウ)

桐島、部活やめるってよ桐島、部活やめるってよ
(2012/04/20)
朝井リョウ

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しごとが「やすみ」の日の朝、本屋をうろうろとする(もらいものの図書カードがまだあるのだ)。『チア男子!!』の人が直木賞とったあとで、これまで出た本が並んでるなかで、文庫を購入。この本が最初に出たころ、「なんやおぼえられへんようなタイトルがついてるなー」と思っていた。"ナントカやめるってよ"みたいなやつ、とか言っていた。

読んでみたら、これは高校生群像の小説だった。同じ高校にいる何人かの視点で、その高校生活が描きだされる。そういうところは、『ラヴァーズ・キス』のようでもあり、『夜の光』のようでもあり、高校生群像という点では『幕が上がる』のようでもあった。

タイトルに出てくる「桐島」はバレー部のキャプテンだが、5人の名がついた章のタイトルに桐島の名はなくて、5人の話のなかで出てきたりする。いちばん桐島のことが出てくるのは、同じバレー部で、桐島と同じリベロのポジションで、補欠だった小泉風助の章。
平成うまれの著者は、19歳でこれを書いたそうだ。疾風怒濤のど真ん中からはちょっとズレているかもしれないけれど、19歳つったら、まだまだ自分がどっちむいて何したいんか自分でもワケわかんねーって頃ではないのか。『幕が上がる』のさおりは、地方都市の高校生のことをうまいこと書いた小説を読んで「これは私たちだ」と思うものの、そういう小説はたいがい、もう大人になった主人公が高校時代を振り返るような設定で「自分がわかった」風に書かれている、私は自分のことをこんなにわかっていないと語っていた。

さおり式に言うと、この著者の朝井リョウは、「これは私たちだ」というのを、私たちの歳のまんまで書いたようなものではないか。

▼桐島はいつも、俺の前を歩いていた。だけどその桐島がいなくなって、みちしるべがいなくなって不安になるのか、視界が開けた、とすがすがしく感じるのか、正直、俺はわからなかった。ただ、考えれば考えるほど自分がどんどん嫌な奴になっていくような気がするから、俺は結局蓋をする。(p.37、小泉風助)

▼なんで高校のクラスって、こんなにもわかりやすく人間が階層化されるんだろう。男子のトップグループ、女子のトップグループ、あとまあそれ以外。ぱっと見て、一瞬でわかってしまう。だってそういう子達って、なんだか制服の着方から持ち物から字の形やら歩き方やら喋り方やら、全部が違う気がする。(p.64、沢島亜矢)

▼僕らは気づかない振りをするのが得意だ。…
 自分達が傷つきそうなことには近づかない。もう一度、自分のこの立ち位置を再確認するようなことはしない。
 ひとりじゃない空間を作って、それをキープしたままでないと、教室っていうものは、息苦しくて仕方がない。それをかっこよくこなせるほど17歳って強くないし、もしそういう人がいたとしても自分はそうじゃないってことだ。(p.92、前田涼也)

▼くだらないかもしれないけど、女子にとってグループは世界だ。目立つグループに入れば、目立つ男子とも仲良くなれるし、様々な場面でみじめな思いをしなくてすむ。…どこのグループに属しているかで、自分の立ち位置が決まるのだ。
 だけど、時々、なぜだか無性に、どんな子でもいいからたったひとりだけの親友が欲しいと思うときがある。笑いたくないときは笑わなくてもいいような、思ってもないことを言わなくてもいいような、そんな当たり前のことを普通にできる親友が欲しいと思うときがある。私たちは、そんな気持ちを隠すように髪の毛を染めたり爪を磨いたりスカートを短くして、面白くもないことを大声で笑い飛ばす。(pp.150-151、宮部実果)

▼沙奈はきっと、これからずっとああいう価値観で生きていくんだろう。…ダサいかダサくないかでとりあえず人をふるいにかけて、ランク付けして、目立ったモン勝ちで、そういうふうにしか考えられないんだろう。
 だけどお前だってそうだろうが、と、夕陽に長く伸びる自分の影を見て思った。(pp.188-189、菊池宏樹)

わかるような、わからんような、思い出せるような、思い出したくないような、5人の話を読んでいると、中学とか高校の頃のいらいらや、むかついたことや、表出する手だてがわからなくてうずまいていた感情なんかを、遠くから、ながめているような気持ちになった。

(1/30了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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