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サマータイム(佐藤多佳子)

サマータイムサマータイム
(2003/08/28)
佐藤多佳子

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佐藤多佳子のこの本は、いつだったか読みかけたことがあったのだが、読みきらずに返してしまった。この人の本が好きだという人からすすめられたのだったと思うが、どうも乗らなかった。図書館でみかけて、久しぶりにまた借りてきてみる。

6年前の夏、ぼくはどしゃ降りの雨のなか、プールで泳ぐ彼と出会った。左腕がなく、右腕だけで泳ぐ彼の姿から、ぼくは目を離せなかった。ぼく・進は小5、彼・広一くんは2つ上だった。

1つ上の姉の佳奈と、広一くんと、ぼく。夏の思い出は、3人で食べた海のゼリー、広一くんと佳奈が連弾したサマータイム、佳奈が練習につきあった広一くんの自転車の特訓。そして秋がすぎて、広一くんは引っ越してしまい、連絡はとだえた。
高校生になったぼくは、ピアノが弾けるというだけでジャズ研に入った。そして17歳の夏の終わりに、広一くんが突然訪ねてきた。

広一くんがもう今はピアノを弾かないと聞いて深く失望してしまったぼくは、けれど、部活でジャズとかやっていてピアノを弾くのだと言った時に、広一くんが目を輝かせて喜んでくれたことで、あの夏から今まで、すべての夏がピアノの音で数珠つなぎになったような感じがした。

そして、広一くんと入れかわるように外へ逃げてしまった佳奈が、自分の自転車のハンドルを握って立っているのを見た時、ぼくはわかったのだ。

▼ぼくにとって広一くんがピアノであるのと同様、佳奈にとって、彼は自転車だった。ぼくは、そのバカげた感情が痛いほどわかった。でも、だめだよ。彼はもう大人なんだ。ぼくだって、彼にピアノを弾けとは言わなかったんだ。浅尾広一に、今さら自転車のことなんかで恥をかかすのはやめろよ。(p.56)

表題作の「サマータイム」に続く、「五月の道しるべ」は佳奈の一人称で、小学生になったばかりの頃が描かれる。「九月の雨」では、進や佳奈とわかれて数年後、思春期まっただ中の16歳の広一の目から見た世界が書かれている。そして「ホワイト・ピアノ」は、恋の話なんか大嫌いで、恋をしなくても平気という14歳の佳奈の氷のようにかたまった心が、溶け出す物語。

音楽にうとい私は「サマータイム」がどんな曲なのかわからないのだが、「サマータイム」を知ってこの連作を読むと、また新たな感情が湧いてくるような気もする。

(1/29了)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第44回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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