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精子提供 父親を知らない子どもたち(歌代幸子)

精子提供 父親を知らない子どもたち精子提供
父親を知らない子どもたち

(2012/07/27)
歌代幸子

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去年、たしか新聞の書評でみかけて、読んでみたいと思っていた本が、空いていたので借りてきて読む。これを読んだちょっと後に、民間で「卵子提供」の団体ができるとかどうとかいう報道があって(*)、何をどう考えたらいいのか、ほんまに頭が混乱する。

時代もあるのだろうけれど、壺井栄の『雑居家族』なんかを読んでも、育てられる人が子どもを引き取って育てるとか、子どものできへん人がもらい子をして育てるというのは、ふつうにあったんやなと思う。なにより、私の祖母は、結婚してからなかなか子どもができず「もらい子をしよう」と決めていたところに、母がぽこっとできたのだという。

祖母が死んだ葬式のときに、ふと見た叔父さんの耳が、祖母の耳とそっくりで、(こういうのが血なんかなあ)と思いもしたが、一方で、やはり私のなかには、スゴイ不妊治療の話を聞くたびに(そこまでして血のつながった子がほしいものなのか?)という気持ちがあるのだった。
この『精子提供』の本は、AID(非配偶者間人工授精)によって生まれた子どもたちがずっと秘匿されてきた「遺伝上の父」のことを知りたい探し求める話、その子の両親である夫婦がAIDを受けるに至った経緯、なぜ精子提供者の情報は隠すべきことになったのか、、、といった話が主に書かれている。

その部分の話は、子どもの取り違え事件から「血」の関係と「育て」の関係を問うた『ねじれた絆』を思いだしたりもして、半分でも「血」がつながっているということは、親子にとって、そして夫婦にとって、どういう意味があるんかなーと考えながら読んだ。

私が一番印象に残ったのは、8章の、里親になって子どもを育て、家族をつくることを選んだ人の話。

不妊の原因が自分にあると分かった夫は、養い親になることを選んだ気持ちをこう語る。
▼「AIDを受ければ、私は血がつながらなくても、女房の身体に宿る子どもが生まれたかもしれない。でも、それは二人とも考えなかった。何よりも夫婦が同じ思いで子どもを育てることが大切だったから…」(p.197)

児童相談所に里親登録して、「こんな子がいるんですが」と連絡があったとき、二人は本人に会うことなく、里親になろうと決めた。
▼「僕らは子どもにいっさい条件をつけないと話していたんです。我が子を授かったとしても、その子がどういう状況で生まれてくるのか、障害があるのかどうかもわからない。ただ、いずれは養子として迎えたいので、血縁の人と縁が切れる子どもをお願いしたのです」(p.186)

子どもを迎えるのに条件をつけない、というのは、理想論なのかもしれない。「こんな子がほしい」と望むのは、どこか自分に近いものを求める気持ちなのかとも思うし、親のエゴなのかとも思う(サンデルの本に出てきた、不妊カップルの話を思いだす)。

少なくとも、「子どもを迎える」のに、いまはかなり意識して"条件をつけない"と考えなければ、「こんなふうに、あんなふうに」という親のヨクボウのようなものは際限ないことになりかねないんやなと思った。その背後には、「思うようにできる」と錯覚しかねない技術がある。その技術は、ほんまに使ってええのか?と、私はやっぱり考えてしまう。 

(1/5了)

*卵子提供登録支援団体 http://od-net.jp/
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第39回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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