読んだり、書いたり、編んだり 

レモンタルト(長野まゆみ)

レモンタルトレモンタルト
(2012/10/16)
長野まゆみ

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まだ図書館も開いてへんしーと、駅前の本屋を半時間ほどうろついて、長野まゆみのこの文庫を買う。長野まゆみ、なつかしーなー、『少年アリス』ってどんなんやったっけなーと思う(『少年アリス』は、そのむかし保育園から学童と一緒だった幼なじみに貸してもらった本である)。

若くして死んだ姉、その夫である義兄と、弟の私。姉の思い出がところどころに差しはさまれつつ、二世帯住宅の一軒家で、義兄と壁を隔てて隣に暮らす私の二人のちょっとフシギな話。私の周りで起こる妙な小事件について、推理好きの義兄は物語につくってみせる。そこは、ちょっと坂木司風。
私は、会社で、役職者たちがまともな秘書や部下には頼めないありとあらゆる雑事をこなしている。しかもそういう業務をしていることを悟られないよう、会社では備品管理の雑用係として座っている。元役員の遺児(しかも庶子)が縁故採用されたごくつぶしと言われ、同期たちからはたぶん軽蔑されている。

その会社の役員たちや同期らを何人か配しながら、話はすすむ。人事部長が女性であるところが、ちょっとツボ。

そして、読んでいくうちに、私が義兄を好きなのだとわかってくる。そのことを、義兄の母である朝比奈夫人には見ぬかれていて、夫人はところどころで、大好きな男とのふたりの時間を用意してみせる。

私のよく行く店のひとつに、亭主が同性をパートナーにする人物だ(むろん、公にしていないが)というダイニング・バーがあり、私の観察では、客層にやや片寄りがあるのは事実だ、といったエピソードも出てくる。

登場人物たちの「名前」が、かなり後から分かる書き方になっているところもおもしろかった。「私」や「義兄」の名もかなり読んでから分かり、最初は「Y」や「M」「T」などとイニシャルで出てくる上司や同僚の名も、あとで不意にあらわれる。

巻末解説によれば、「匿名性が引きたてるのはその人物の属性である」という。そう言われてみれば、"こういう背格好で、こういう見かけをもち、こんな振る舞いをする人物"として、それぞれの登場人物はうまく描かれていて、「名を与えない」ことが、そのあたりを注意深く読ませる効果を感じた。

レモンタルトは、亡くなった姉の好物だったスイーツ。おいしそう。

(1/3了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第40回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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