読んだり、書いたり、編んだり 

街場の読書論(内田樹)

街場の読書論街場の読書論
(2012/04/12)
内田樹

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ときたま内田樹のブログを読む。この人のここ数年にばかすか出た本は、ブログコンピ本が多いので、読んでいると、あーこれ確かブログで読んだなーと思う。この本は、おもに「書物」や「書くこと」について内田が書いたものが編まれている。

とくに5章の著作権棚におさめられている文章は、「『We』がこの頃ほんまに売れへんなー」ということと照らして、いろいろと考えることが多かった。たとえば「読書と書籍購入者」には、こんなことが書いてある。

▼ネット上で無料で読もうと、買って読もうと、どなたも「私の読者」である。本は買ったが、そのまま書架に投じて読まずにいる人は「私の本の購入者」ではあるが、「私の読者」ではない。私は「私の読者」に用があるのであって、「私の本の購入者」に用があるわけではない。
 著作権についての議論ではどうもそこのところが混乱しているような気がする。
 もの書く人間は「購入者」に用があるのか、「読者」に用があるのか。(p.312)

そりゃもう「読者!」に用があるわけだが、『We』をつくる経費もなんとか賄いたいから「購入者」もそれなりにいてほしい。「『We』がこの頃ほんまに売れへんなー」という実感からすると、(今のまま続けるのはかなり厳しいなア…)と思い、「こちらからお金を払っても申し上げたいことがあるので、本を書いている」(p.311)という内田の心向きを読むと、(私は『We』を出すことで何がしたいんやろう?)と思う。
『We』の一読者だった私が、ひょんなことから「乱読大魔王日記」を書くようになり(原稿料はずーっと現物支給だった)、校正を手伝ったりの時期を経て、『We』の編集部に入った。「読者」だった頃と、変わらないこともあるけれど、「つくる、編集する」側に入って、感覚が変わったところもやっぱりある。

読者であった頃から、『We』の行商を手伝ったりもしていたが、つくって売る側になって、より一層(『We』がもうちょっと売れへんかなー)と考えるようになったことが、いいのかわるいのか…とも思う。読んでもらいたいという気持ちと、買ってもらいたいという気持ちと、ちょっと分けて考えたほうがいいんかな…と内田があれこれ書いてるのを読んで思った。

「このメッセージは自分宛てだ」と感じられるかどうか、そこが大事なところやと内田は書いていて、『We』を「これは、私のための雑誌や」と思える人に届けられるかどうか(そして、いま届けられているか)、のようにも思った。

「あとがき」にある贈与と存在の話がよかった。

▼贈与の本質は「これを受け取ってください」と差し出すことです。そのとき手渡される「これ」にはあまり意味がありません(そう思っている人が多いですけれど、違います)。
 そうではなくて、「はい、どうぞ」という贈与行為そのものが重要なのです。
 というのは、「はい、どうぞ」は「あなたはそこに存在する」という重大な認知的言明を含んでいるからです。
 贈与に対する「たしかに受け取りました」という返礼も同じです。それは「私に贈与したあなたはそこに存在する」という言明に他ならないからです。
 「あなたはそこに(受信者として)存在する」という言明に対して、「あなたはそこに(送信者として)存在する」という鏡像的な言明が返される。この相互認知、お互いに「あなたはそこに存在する」という言葉を贈り合うこと、それがすべての夾雑物を削ぎ落としたときの贈与の本質だと僕は思います。(p.412)

present、存在そのものが贈りものだという、西村理佐さんのお話に通じるものがある(理佐さんのお話は、『We』181号に掲載)。

(11/25了)
 
Comment
 
 
2012.11.28 Wed 22:45 宮原  #Qi8cNrCA
読んでくれる人も買ってくれる人もどっちも大切じゃろう。読んでくれないとせいがないし,買ってくれんと次をつくる資金がないし。ネットだけにすれば金はあんまりいらんかもしれんけど,紙だからこそはいってくる情報もある。ついでに読んだ記事からびっくりするような学びがあったりするのはよくあるしね。だからp312のところはちょっと?!?だったけど,無償のテクストから有償のテクストの読者へ育っていき,それは不可逆的というのには納得。良いテクストの作者はどうぞしっかり稼いでいただいて,再生産に励んでほしいです。
どっちも。  [URL][Edit]






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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第40回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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