読んだり、書いたり、編んだり 

幕が上がる(平田オリザ)

幕が上がる幕が上がる
(2012/11/08)
平田オリザ

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高校演劇部の話。いろんなものごとが、ぐんぐん動いていくようだった。これが"動"だとしたら、前の日に読んだ『よるの美容院』は"静"というかんじ。読んでいて、高校や大学で演劇をしていた友だちを思い浮かべたりもしたが、自分の高校時代の部活(ドクターストップでやめることになった水泳部と、そのあと入った美術部)を思い出したりもした。

演劇部にも地区大会や県大会があって、そこで芝居が講評されたりする。「高校生らしい」とか「らしくない」とか言う、その審査員のセンセイ方の話を聞きながら、部長で、作・演出のさおりが、他校の作品やテーマと自分のを引き比べていろいろと考えるところがおもしろかった。

▼私たちは、どうにかやっている。
 私たちは、どうにか高校生を楽しんでいる。
 いろいろな芝居を観て、少しだけ分かってきたことがある。私はどうも、等身大のふりをして高校生の問題をわざと深刻に描くような芝居が嫌いなみたいだ。じゃあ、私はどんな芝居が好きなんだろう。いまやっている芝居は、私の好きな芝居だろうか。(p.238)
高校生のときは自分がよく分からない。高校生をすぎたからといって、「ハイ、これが私」と分かるわけでもない。自分は何を書けばいいのだろうと、さおりは吉岡先生や滝田先生に教えられた小説を読んでみたりもする。どの作品も北関東の地方都市の高校生のことがうまく書かれていて、「これは私たちだ」と思った。でも、あまりにうまく書けていて、こんなのを自分が芝居にしても変だろうとさおりは思う。

▼…だって私たちは、実際には、私たち自身のことを、こんなによく分かっていない。分かっていないからとても困る。こうやって小説とかにしてもらえば、あぁ、たしかに私たちってそうだなって思うけど、でも、やっぱり自分のことはよく分からない。…
 …たいていの上手くできている小説は(あと映画とかも)、だから大人になってから、あと東京とかに出て行ってから高校時代をふり返るような体裁でリアリティを保っている。そして私たちも、大人になったら、こんな風に自分のことが分かって、少しは楽になるのかなと思わせてくれる。(p.136)

自分はどんな作品を書いたらいいのかと吉岡先生に聞きに行って、「あなたたちの悩みや苦しみをことさら書かなくても、きっとそれは、どこかににじみ出てくるってこと。私が書いて欲しいのも、そういうもの。いまの高校生はこんなことで悩んでますとか、私に聞かされても困るからね」(p.139)と言われる。

いままでの大人には「君たちの等身大の悩みや苦しみや喜びを書け」と言われた。「そんなものは、私に聞かされても困る」と言う教師に、初めて会った。さおりはそう聞いて、半信半疑ながら、この人を信じてみようと思う。

▼私たちは、『銀河鉄道の夜』に、私たちの「高校生らしさ」を入れたつもりだ。いじめも進学もクラブ活動も、私たちにとって、たしかに大事な問題だけど、十七歳の私には、もっと大事なことが何かある。それがなんなのか、よく分からないけど、その分からなさを、芝居にしてみた。答えはない。答えがないとダメなのか。(p.241)

ぐんぐん読んでしまったあとに、もう一度てっぺんから二周読み。10代の終わりと20代前半の若い人と会ってしゃべった後だったこともあって、よけいに入りこんだかんじで読んだ。

小説というかたちで、高校生の悩みや苦しみや喜びのようなものを読んでいると、自分はもうそういう頃はすっかり過ぎたけれど、でも高校生の頃の気持ちとそう変わらないものを感じることもあるなーと思ったりした。

そして、芝居を観たくなった。

(11/23了、11/24二読)
 
Comment
 
 
2013.01.01 Tue 22:59 雅子  #DvI991tw
平田オリザさんって多方面で活躍されているので、
てっきり小説も書かれているのかと思っていたら、
「幕が上がる」が初めてなんですね!
しかも珍しい高校演劇の物語で、結構はまっちゃって
一気に読み終わってしまいました~。

そしてやっぱりネットでも話題になってたりして、
ついには、平田オリザさんご自身を解説するサイトまで!
http://www.birthday-energy.co.jp/

興味深いのは、離婚が新たな挑戦への第一歩になったという点。
新たな面が見えてくるのはすてきですね。
劇作家が新たな人生の脚本をアップデート  [URL][Edit]






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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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