読んだり、書いたり、編んだり 

復興の書店(稲泉連)

復興の書店復興の書店
(2012/08/06)
稲泉連

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日が暮れてだいぶたっても仕事が終わらず、へとへとになり、遅れて手話サークルへ行って帰って、疲労感ばくはつ。ぬくいご飯を食べて、歯磨きして、湯たんぽいれて、布団にくるまって本を読む。読んでみたかった『復興の書店』

本というもの、本屋というものが、人の暮らしにとってどんな意味あいをもつのかを、じんわりと感じる本だった。

津波による被害を受けた三陸沿岸、そして福島県や仙台市の書店のほか、取次会社、地元の出版社や新聞社、紙やインキの工場で働く人など、本や雑誌にかかわる場や人が取材されている。

飲食店やスーパーとは違い、本屋は非常時に必要とされる商売ではないと、被災した本屋さんの多くは思っていた。でも、そうではないことを、被災地の本屋の人たちは身をもって知った。本は、時として食料以上に必要とされる。被災後にようやく店を開けたときには行列ができ、食料や日用品をリュックいっぱいに背負った人たちが、本屋にひしめいていた。
中小書店を主な顧客とする取次の中央社の斎藤進さんは、被災地の書店がどうなっているか確かめるため、行けるところから訪ねはじめた。店も自宅も流され、避難所にいた書店主を訪ねたとき、斎藤さんは、少しでもいいから本を持ってくればよかったと痛切に感じた。
▼「…だって、周りを見渡すとね、皆さんプライバシーがない上に、人によってはじっとしていなければならないんです。テレビも体育館全体で一台しかないし、やっているのは震災のニュースばかりでしょう。本だったら、個人個人が自分の好きなたった一人の世界に入り込むことができる。週刊誌でも絵本でもいい、ここでは本が必要とされているんだ、と」(p.21)

なかなか商品が届かず、新しい雑誌や本が入らないまま店を開けた丁子屋書店(相馬市)の佐藤トキエさんは、書店にふらりと入ってくる人の姿に、こう語る。
▼「本屋って最初から欲しい商品がある人もいるけれど、いちばんの魅力は何となく棚を見ながら、一人で自分の興味のありそうな本を探せるところですよね。その意味で気分転換ができる場所だったのかな、と思うんです」(p.73)

仙台のジュンク堂ロフト店で働く書店員・佐藤純子さんは、「自分のため」という思いを押し隠さざるを得ない被災生活だったからこそ、多くの人たちが本を求めたのではないかと話す。
▼「がんばんなきゃいけない、つながらなきゃいけない、みんなのために、っていうことが当たり前みたいになって、自分のため、自分だけのための時間を作ることがとても難しかったから。本を読むことで、その時間を作りたかったんじゃないか、って思います。たとえ買わなくても、お店で本を選ぶ作業は自分一人のためだけにできる充実した時間です。それが厳しい被災の現実を癒やすことはなかったかもしれない、支えになることもなかったかもしれない。でも、そこにはほんの少しの休息くらいはあったかもしれない」(p.113)

阪神大震災を経験したジュンク堂の工藤会長は、東日本大震災のあと、仙台駅前のロフト店を訪れたときには「できるところからでええから、明日からでも営業しなさい」(p.119)と指示を出した。

「本屋というのは神社の大木みたいなものでね」(p.127)と工藤さんは言う。
▼伐られてしまって初めて、そこにどれだけ大事なものがあったかが分かる。いつも当たり前のようにあって、みんなが見ていて、遊んだ思い出がある場所。…本屋は何となくあるようでいて、そんなふうに街の何かを支えている存在なのだ…」(pp.127-128)

自分にとって、本って何やろう、本屋ってどういうとこやろうと思った。私は、本屋や図書館が近くにあるところでずーっと住んできた。本屋がない町や図書館がない町が少なからずあることを知ってはいるけれど、近所に本屋がない、近所に図書館がないという生活を、なかなか想像できない。そういう場所で暮らすことになったら、私は何を読むやろう?と考える。

飯舘村の村営書店「ほんの森いいたて」(現在は閉店)で働いてきた高橋みほりさんの子どもの頃の思い出は、本が好きな子どもにとって本屋や図書館がなかった村は少し窮屈なものだったことを伝える。

▼「いつも『お母さん、本屋に寄って』と頼まないといけないし、本を選んでいると時間がかかるから『遅い!』って怒られるし… だから"本"って、いつだって急いで選ばないといけないものだったんです。」(p.141)

村に本屋ができたとき、心ゆくまで本を見られるようになった。その本屋で、高橋さんは十数年働いた。震災後は、3月末に営業を再開した。けれど、放射線量の高さから、飯舘村は計画的避難区域に指定され、6月に「ほんの森いいたて」は閉店した。

本屋は相当の体力仕事だということは知っている。おそらく図書館以上だろうと思う。私の体力ではきついかも…と思いつつ、(本屋で働いてみたいなー)という気持ちは、ずっと私のなかにある(まだ枯れてない)。そういえば、亡くなったi先生は、古本屋のおやじがしたいねえ、とコーヒーを飲みながらよく言っていた。

(11/14了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第40回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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