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巨岩と花びら―舟越保武画文集

巨岩と花びら―舟越保武画文集巨岩と花びら
―舟越保武画文集

(1998/12)
舟越保武

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こないだ読んだ『舟越保武全随筆集』は、表紙カバーの作品写真と、口絵にご本人が犬といる写真があったほかは、作品の図版などがなくて、どっかでこの人の彫刻やデッサンを見られへんかなと思っていた。

近所の図書館には、全随筆集にも収められている『巨岩と花びら』くらいしか所蔵がなく、とりあえずそれを借りてみる(ほんとはこれを先に読むつもりだったのが、予約したら書庫ありの本が「所在不明で捜索中」と連絡がきて、先に相貸で届いた全随筆集を読んだのだった)。

届いた文庫は「舟越保武画文集」とあるように、彫刻やデッサンの図版がいろいろ入っていた。舟越が「もっとも気に入っているデッサン」だというキリストの顔(フィクサチーフをかけすぎたやつ)も掲載されていたし、「この像が私の作ったものの中で、いちばん気に入っている」というダミアン神父の像とデッサンも掲載されていた。

たぶんこの本の文章は、こないだの全随筆集で読んでいるはずだが、字詰めが違い(全随筆集に比べるとゆったり)、図版も入っていて、せっかくなのでもう一度読んだ。
巻末近くの「石工の心」も、たぶんこないだ読んだはずだが、エジプトやギリシャ、ヨーロッパ中世の彫刻が写真入りで書かれているページは、まるで初めて読むようだった。

「作ったものに名を印さない石工たち」(p.230)について、中世より後の"自分の作品"を押し出すようになった時代とひきくらべて書いているところが印象に残る。舟越は、この中世の石工のようでありたいと思うようになっていたらしい。仕事に向きあう姿勢ということも考える。

▼ルネッサンス以降は、ミケランジェロでも、作者の自分というものを押し出して、世間に見せようとする、そういう意識がつづいているんです。
 中世以前は自分の名前など問題じゃない、作品さえよく出来ればいい、という態度の仕事です。このところに、現代との大きな違いがあると思うのです。
 私は、いまそのことを強く考えさせられます。(p.205)

舟越は、『ロダンの言葉』の本に魅せられ、ロダン様、ミケランジェロ様と夢中になってきたが、しだいに近代から溯り、中世のものに惹かれるようになった、という。そのことは、舟越の随筆の中でも、いろいろな表現でくりかえし書かれている。

人間を見て、自然を見て、古い時代からの作品を見て…そうしてつくられてきた舟越の感覚が、私はその文章によくあらわれていると思って読んだけれど、ご本人はそうは思っていないらしい。見たものをそのまま書ければいいのだが、というようなことを、あとがきには、こんな風に書いてある。

▼文章を書き出すと、どうも私には途中から横道に外れてしまう癖があります。枝の方に行ってしまうので、幹を見失って苦労します。こう言う人間は「意想奔逸」といって、頭の病気なのだそうです。
 …私の中に鮮明に見えているものが、文字にすると、鮮明でなくなります。露出不足の写真のようです。
 …
 私の歩いてきた一本の道をふりかえると、遥か遠くから、いま私のいるところまで、電柱の灯りが、並んで点滅しているように見えます。青く光るものもあり、暗くて鈍い光りもあります。
 小さくまばたくその灯りを書こうとするのですが、それがなかなか文字にはなってくれないのです。
 その光りをそのままに書けるといいのですが、それが出来なくて、読んで下さる方に、申し訳ない気がします。(pp.252-254)

あとがきの後ろの、木崎さと子の解説文もよかった。

舟越保武が、自分のふらふらとしたところ、怠けぶりを書いたところもおもしろかった。この人は、「クリスチャンでもあるし、たいへんまじめな、脱線などしない人間だと思われると、どうも私は困るのです」(p.201)というような人であったらしい。

ここを読んで、たしかに私のなかにも、クリスチャン=品行方正な方、という勝手なイメージがあったなと思った。

(10/31了)
 
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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