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巻き込む力 すべての人の尊厳が守られる世界に向けて(土井香苗)

巻き込む力 すべての人の尊厳が守られる世界に向けて巻き込む力
すべての人の尊厳が守られる世界に向けて

(2011/01/20)
土井香苗

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熱はやや下がりかけるも37度台だった日の読書。
私の「職業=プロフェッション」は、「人権を守る仕事」だという著者のこれまでを書いた本。大学時代にアフリカでボランティアをし、その後日本で弁護士になって難民や在日外国人を弁護する仕事を中心に行い、それからアメリカに渡って国際人権NGOのスタッフとなって日本に戻ってきた、という人。自分は「人権活動家(human rights activist)」だ、とも書いてある。

熱が続いてちょっと弱っているせいもあるのか、「正義を貫く活動」とか「正義を支えにキャリアを積む」という見出しに、(正義って…なんかすげぇー)と思いながら読む。

著者は子ども時代、「親からあまりほめられたことはなく、しかられてばかり」で、「勉強ができなければ何もとりえがない子」とまで言われていたという。達成感を味わえるのは唯一「勉強して学校の試験でいい成績をとること」。親に支配されていたと書くその鬱屈は、相当きつかったのだろう。著者が大学生、妹が高校生のときに、姉妹二人で家を飛び出し、「その日を最後に、今日に至るまで家には戻っていません」というから、親との葛藤はすさまじかったものと想像できる。
私もずっと家を出たいと思っていたので、著者のきもちは少し分かる気がする。私も家を出て、親とはそれなりの距離を保つことで、精神的にらくになった。一度も戻ってないということはないが、私の場合は家を出て以来、実家は「行く」ところで、行ったら「自分のうちへ帰る」。母の葬式の前後などを除き、泊まったことはほとんどない。

著者は、"人権弁護士"となり、アフガニスタン難民弁護団に参加する。2001年9月11日の同時多発テロの翌月、アフガン戦争が始まり、日本では、難民申請をしていたアフガニスタン人が突然東京入管に強制収容された。「アフガニスタン人だからアルカイダについて何か知っているのではないか」という理由にもならないような理由で、テロ対策の名のもとに拘束されてしまったのである。成田で入国拒否されて、そのまま入国管理センターに強制収容されているアフガニスタン人がいることも判明した。

収容された難民たちが、収容所について「刑務所と同じ。しかも刑期がない分、刑務所よりもひどい。未来に対する希望が奪われる」(p.98)と訴える言葉に、たまらない思いになる。

タイトルの「巻き込む力」は、たとえばこの難民弁護団の経験を経て、こう書かれる。
▼巻き込む力を発揮するには、やみくもに何でも巻き込んでいけばいいというものではありません。そこには戦略が必要です。支援者やNGOを巻き込み、イベントなどを行い、メディアに載せて世論を作る。それが国会議員や行政にも届き、制度を変え、社会を変えることにつながっていきます。巻き込む力を日本の難民制度の改革につなげていくのです。(p.113)

そして、難民問題を知らせるイベントが新聞に写真入りで取り上げられたことについては、こう書かれている。
▼絵になるイベントを行うと写真が載るということを私たちは意識していたのです。
 世論を動かすには、新聞などのメディアに取り上げられることが重要です。さらに写真が掲載されると、見てくれる人の割合が格段に大きくなるので、とても効果的です。メディアの力をどう借りるかを考え、新聞やテレビを通して世論を動かす。それを見た国会議員や行政が動いていく。私たちの戦略はそこにありました。(p.118)

難民問題を解決していくには、人権問題を解決しないといけないと、著者はアメリカへ飛び、ロースクールで猛勉強する。そして、国際人権NGOのヒューマンライツウォッチで勤務したあと、その日本駐在員として働くことが決まって帰国する。

著者が日本に帰って与えられた仕事はファンドレイズ、資金集め。日本には寄付文化がないしなーと思いながらも、各界との人脈もつくりながら、著者は目標額を集められるようになっていく。NGOの運営や活動のための資金を集めることは、おそらく多くのNGOやNPOにとって難しい。著者も書くように「多くは無報酬のボランティアによって支えられている」。目的を掲げ、結果を出し、賛同者を募って、できるだけ多くの寄付をしていただいて財政基盤を作ることが大切というのは、まさにそうなのだろう。

財政よわよわのフェミックスで働いていて、すげーなーと、熱でぼんやりしつつ読み終える。フェミックスが『We』を発行していけるだけのファンドレイズは可能なのかどうか。

(10/5了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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