読んだり、書いたり、編んだり 

プリティが多すぎる(大崎梢)

プリティが多すぎるプリティが多すぎる
(2012/01)
大崎梢

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「ブックマーク」の本のアンケートでおすすめされてた本が、図書館にあったのでつい借りてきて、ちょっとだけ…と読み始めたものの、編集作業をしばらく放り出して読みふけり、イッキ読みしてしまった。

名門の老舗出版社である千石社で「週刊千石」の編集部にいた新見佳孝は、4/1の異動で、ローティーン向け月刊誌「ピピン」編集部へ行くことになってしまった。異動の内示があってから、さすがに雑誌を数冊取り寄せて手にとったものの、表紙を眺めただけで顔が歪む。新見は「シロップまみれのケーキの上に、ソフトクリームとあんこをのせ、上からくろみつをかけたようなものを、ハイどうぞと差し出された気分」なのだ。

しかも、ピピン編集部では「新見とくれば南吉だって」と、いきなり佳孝は「南吉くん」と呼ばれてしまう。とりあえず編集部の人が撮影作業をしているのを見るが、何の興味も持てない。企画を出せといわれ、意見を求められて、何度「どうでもいいじゃないですか」と言いかけたことか。

初めて誌面の企画を提案した日、新見の企画書は全くスルーされた。会議が終わって、編集長はこう言った。
「君が商店街の真ん中に店を出すとする。残念だがどんな店にしたところで、三ヶ月も持たないだろうね」「店主ならなぜ客が来ないのか、その理由を知るのが肝心だろ。君もこの案がどうしてだめなのか、突き止めてごらんよ。誰かに尋ねてもいいし、自分で考えてもいい。聞けばみんな、同じ答えを言うと思うよ」(p.40)

私も、カワイイものやごちゃごちゃフリフリしたものが得意ではないし、正直にいえばあまり興味が持てないので、読み始めたときには「何の興味も持てない」新見に、それなりに共感があった。

自分が興味ないものは、「まあ、どうでもいい」ものになりがちだ。でも、世に出ている雑誌には読者がいて、それぞれの読者がそれぞれの思いで読んでいる。それはマイナーな『We』でも、めっちゃ売れてる何かの雑誌でも、たぶん同じ。

ちまちましたハートやリボンの記事を、この雑誌を、どんな子が読んでいるのか、新見は考え始める。自分が渋々やっている仕事を、やりがいのある楽しみな仕事としてやっている人もいる。

物語は、新見のそれからの一年を描く。ここが、読ませる。ピンクでプリティで、私がひゃーと逃げそうな雑誌の話だったけど(「女の子はPが好き!」とか言われると、そんなひとくくりにされてもナーとつい思ってしまう)、それを読んでる小中学生の思い、夢や憧れ、そして成長…なんてものを、びしばしと感じて、途中ではついほろっとした。

一年経って、新見が編集長に言われた言葉を思いだす場面がある。
「去年の春、異動になってすぐの頃、編集長に言われたんです。『君が商店街の真ん中に店を出すとする。残念だがどんな店にしたところで、三ヶ月も持たないだろうね』って。今ならその意味がわかるような気がする。なんでも本気で取り組んでこそ、見えてくるものがあるんでしょうね。そこにいる人たちの気持ちや、顔のひとつひとつ。見えて初めて作り出せる」(pp.278-279)

編集部モノという意味では、『舟を編む』にも似ているが、あちらがつくりあげていくモノ(=辞書)にぐーっとつっこんでいくとしたら、こっちは、そのつくりあげていくモノ(=ローティーン向け雑誌)を通じて結ばれ広がっていく人間もよう、心もようがいきいきと書かれていて、甲乙つけがたく、どちらもおもしろかった。

もう一冊、「ブックマーク」で同じ方がおすすめしてくださっていたは、何十人かの予約待ちだったので、またしばらく先でぜひ読みたい。大崎梢といえば、『配達あかずきん』の本屋シリーズも、『平台がおまちかね』の出版社営業さんシリーズも、また読みたくなる。

(8/22了)
 
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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