読んだり、書いたり、編んだり 

酔いがさめたら、うちに帰ろう。(鴨志田 穣)

酔いがさめたら、うちに帰ろう。酔いがさめたら、うちに帰ろう。
(2006/11)
鴨志田 穣

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サイバラと月乃光司の『おサケについてのまじめな話』に続き、カモちゃんの本を借りてきて読んでみる。

サイバラが書いていた、アルコール依存症のきつさ、「本人の心根や性格には関係なく、こんなに悪質なことができるのかっていうようなことをする」というのを思い浮かべながら、いわばそれを本人の側から書いたのがこの本なのだと思って読んでいた。カモちゃんは、こんな風にして、アルコール依存症から脱けようとしたのだと思って読んでいた。

本の最後にきたら「この物語はフィクションです」とあって、えっ?と思うと、図書館のラベルも913、小説だった。
▼手はぶるぶると震えているが、一杯、二杯とカップ酒を一気にあおると、指の震えも"ピタリ"と止まる。
 それが毎朝、一番最初にする行為だった。
「よーし、これで仕事もできるぞ」
 机に向かうと、二十分もしないうちにお尻がむずむずしてくる。
 居ても立ってもいられなくなり、コンビニへ向かう。
 ウォッカの小びんを三本、三百五十CCの缶ビールを五本、まとめ買いする。
 ウォッカをコップになみなみと注ぎ、麦酒のプルトップを"プシュッ"と開ける。
 ウオッカをぐびりと飲りながら、チェイサー代わりに麦酒。
 つまみは何もいらない。
 机の上にある時計をみると、午前十時半。もう一日が終わりである。
 こういう日々がどれくらい続いているのか、頭の芯が二十四時間、ずーっとほんわか温まったままなので、いつからこの朝酒が始まったのか、思い出せない。(p.8)

こんな風にして飲むのか、飲んでしまうのか、と思う。
依存症、というのは、こういうことなんやと、思う。
「やめよう」という気持ちだけでは、とても止まらない。壊れているとしか思えない。

▼「それでどうして血を吐くまで飲んだの」
 「さびしくて、かなしくて」(p.81)

退院までこぎつけた同病者の、引受人としてやってくる家族を見ながら、「僕」は思う。夫や妻、恋人や子どもがアルコール中毒という病気だと受け止めようと努力する家族、どう対処していけばよいのか悩みつつ、共倒れにならぬよう気をつけながら、本人の病気を受け止めようとする家族、そこには"愛"で乗りこえようとする姿が感じられて仕方がないと、「僕」は思う。

▼この病気、はたしてその次元で治る病なのだろうか。何度も心とは裏腹にスリップをくり返し、その度にどんどん周囲の人々を裏切り、一番大切な家族まで、さんざん傷つけてきた自分の体験から考えても、愛がどこまで通ずるのか、半信半疑であるし、治していくための正解というのは、はたしてあるのだろうか。
 正解がなくてもよい。近道すら見えない。
 全く考えもつかないのだった。(p.170)

「この病気は、つまりは家族が割に合わない病気」だと、サイバラは書いていた。
いっそ、放り出して捨ててしまうほうが、らくなのかもしれない。
依存症という病気を、「病気やねんから」と腹に落ちて納得できるか?というと、この物語を読んでいて、それはやっぱりできへんかもしれへんと思う。私はたぶんアタマで必死で受け止めようとして、でも腹には落ちるまでは、やっぱりきついやろうなと思った。

(8/16了)
 
Comment
 
 
2012.08.23 Thu 22:37 みやはら  #Qi8cNrCA
映画を先に見たんですが,本も三読。この病の受け入れ難さには恐怖です。たぶん,ご自分の体験でなく,お知り合いのことを書かれているのではないかなあと思いました。
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第40回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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