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娘と話す 原発ってなに?(池内了)

娘と話す 原発ってなに?娘と話す 原発ってなに?
(2011/10/07)
池内 了

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現代企画室の「子どもと話す」シリーズを見かけたので借りてくる。このシリーズには「子ども(たち)と話す ○○○○」というのと、「娘と話す ○○○○」というのがあるが、たまたま執筆者が話した相手が「娘」が多かったのか何だか、なんで「息子と話す ○○○○」はないんやろ?と、いまさら疑問。(なんとなく、わかっていないオンナコドモにかんでふくめるように話して聞かせる、という感じがしてしまう。)

池内了は、あとがきで「対話相手に若者を想定した「娘と話す」シリーズに執筆できたことを喜んでいる」とか書いてるので、そこのところは、ちょっと引っかかりつつ、このシリーズは、「わかるように話そう」という努力もあって、小難しいことを言って煙に巻こうとはしてないところは佳作といえる。

この『原発ってなに?』は、昨年3月の震災と原発事故後に書かれた。
原発と火力発電の違い。
どちらも、お湯をわかして、蒸気によってタービンをまわしている、という理屈は同じ。
違いは、原子力では石油と比べものにならないほど莫大なエネルギーを取り出せること。「原子力1グラムで出せるエネルギーは、石油1トン分以上なんだ。原子力では手の平に乗る量だけど、石油では貨車1台分だ。」(p.14)

原子力は効率はいいけれど、扱いも難しい。
それが、化学反応と核反応の違い。

原子の結合と解離によってエネルギーをうみだす反応(化学反応)は、地球上で起こっていることであり、日常世界のことであり、生物はこの化学反応のエネルギーで生きている。主には炭素と酸素がくっつく酸化反応で、それでエネルギーを取り出し、廃棄物として二酸化炭素を出す。

それに対して、原子核の分裂と融合によってエネルギーをうみだす反応(原子核反応)は、太陽で起こっていること。ある種のウランは中性子を吸収して核分裂を起こし、その際にエネルギーが取り出されるとともに、分裂の際に飛び出す中性子が、次の核分裂を起こし、連鎖反応していく。反応が続く限り、エネルギーがうみだされる。そして、廃棄物として、放射性物質、死の灰が出る。

原子核エネルギーをとりだして利用したはじめは原子爆弾で、それが原子炉につながっている。
▼「…まず最初に、潜水艦にのせる原子炉が造られた。エネルギーを取り出すのに酸素がいらないから、海の底に長いあいだ潜っていられるので目をつけられた。そして、その原子炉を大型にして原子力発電(原発)に利用するようになった。原子力の平和利用と言われた。それが1953年ころだ。原爆の開発からほぼ10年だね。」(p.40)

そして、"平和利用"が急速に進められたなかで、置き忘れられた問題は、化学反応の技術で、原子核反応をコントロールできるか、ということだった。
▼「単純に言えば、地球の人間は化学反応の世界の1000度のものをあつかう技術しか持っていないのに、原子核反応の1000万度以上をコントロールしようというところに無理がある。結局、原子核反応が暴走したりかんたんにあつかえなくなると、水をかけて冷やすしかない。水の化学反応で原子核反応を押さえ込もうというわけだ。今度の原発事故がそうで、すごく大変なことがわかるだろう?」(pp.41-42)

原爆と水爆の違いは、核分裂と核融合の違い。
中性子によって核を分裂させてエネルギーを取り出すという原子核反応と、水素の原子核を融合させてエネルギーを取り出すという原子核反応の違い。いずれも、化学反応とは根本的に違う。

プラスの電気を持っている原子核どうしをくっつけるには、1000万度を超えるほどの高温が必要。そんな高温をつくるのは化学反応では無理で、核分裂によって、いわば原爆を爆発させることによって瞬間的に得られる1億度に達するという高温を利用する。この本の娘のことばを借りると「原爆がマッチの役割を果たして、石油のように燃え上がる水爆に火をつけるようなもの」(p.51)らしい。

そういえば、昔通ってた大学に、レーザー核融合がなんとかいうセンターがあったけど、やはりここも「ちょっとの元手で、エネルギーがっぽり」の研究をしてるのだろうか、、、(そのセンターのサイトをちょっとのぞいてみたが、何をやっているのかいまいちつかめず)。

娘に話す父が、安全と安心について語っているところを読んで、「安全」となんぼ言われても、「安心」は得られへんよなーと思った。
▼「安全と安心は違う。安全はいろんなてだてをして危険を少なくすることで得られる。ところが、安心とはそんなことにかかわりなく、何事も安らかにすごせることだ。危険なものから自由であるという気分が続いていなければ、安心は得られない。」(p.105)

ほしいのは「安心」で、でも、それは、"100回言うたらウソもほんまになる"というような安心ではないと思った。

(7/15了)
 
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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