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長期脳死 娘、有里と生きた1年9ヶ月(中村暁美)

長期脳死 娘、有里と生きた1年9ヶ月長期脳死
娘、有里と生きた1年9ヶ月

(2009/11/07)
中村暁美

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『脳死・臓器移植 Q&A50』にメッセージを寄せられていた中村暁美さんの本。2歳8ヶ月で突然起こった痙攣の重積によって「脳死状態」を告げられた娘の有里さんは、それから1年9ヶ月を生きた。発病まで、そして「長期脳死」といわれる姿になってから看取りのあいだのことが率直に書かれている。

それまで脳死になんの関心もありませんでした、と中村さんは書いている。「脳死とは、3~4日のうちに心臓が停止してしまう、限りなく死に近いものだというような」(p.v)知識しかなく、有里さんが「脳死」状態となったときには、近いうちに娘との永遠の別れがきてしまうという絶望と恐怖心しかなかったと。

けれど、「脳死」と言われた娘の心臓は自力で動きつづけ、あたたかい体、成長する体があった。「生きる姿を変えただけ」で、ひとつの命を輝かせて生きた有里さんとの、かけがえのない時間。
絶望のなかで、大人の脳死と子どもの脳死は違う、子どもの場合はなにが起こるかわからないと言われ、「有里はいま、生きようと頑張っているのだ」「この子に命があるのなら、最期のその時まで一緒に楽しく生きよう」と、中村さんは希望をもつ。

だが、有里さんの容態はしだいに悪くなり、年内もつかどうか…覚悟してくださいと告げられる。有里さんの3人のお兄ちゃんが、血圧がどんどん低下していく妹の手を握り、体をさすって「元気になって早くおうちへ帰ろうね!」「がんばれ!」とずっと語り続けた。すると、下がる一方だった血圧が、少しずつ少しずつ上がりはじめた。

この日のできごとを見守っていた看護師さんが、有里さんが亡くなったときに3人のお兄ちゃんにこう話した。
「あの時、有里ちゃんの血圧が下がっていくのを、医療ではどうすることもできませんでした。けれどお兄ちゃんたちの励ましの声が有里ちゃんに届いて低下を止め、それを機に有里ちゃんは安定していきました」(p.35)

突然「眠り姫」になった有里さんの姿に、じいちゃんが「目が覚めないと意味がない」とつぶやく。意識がなくても、目を開かなくても、しゃべることができなくても、愛する娘に変わりがない、と思っていた中村さんは、その正直なじいちゃんの言葉に、自分のいだいていた気持ちと同じだとドキッとする。

がんばって生きようとする有里さんの前で、「意味がない」とは言ってはいけないと思う、でも「目覚めてほしい、またもとのように元気になってほしい」と願う気持ちがある。そのことも率直に書かれている。

▼…うるさいくらいお話ししてくれていた有里だったのに、突然、なんにも聞こえてこない。かわいい笑顔も見せてはくれない。目覚めてくれなければ、もう今までどおりの有里ではない。それでは意味がない。
 いや、違う。
 どんな姿になっても、かわいい、最愛なる娘の有里なのだ。必死に家族のもとで生きてくれている子を前に、なんてひどいことを思ってしまうのでしょう。親として有里のすべてを受け入れたはずなのに、それなのに、心の隅に、意味がないと言ってしまう、許されない思いを抱えた私がいました。(pp.81-82)

脳死(脳の機能不全)状態の子どもについての情報があまりに少なく、自分自身も「脳死」について一般的なことしか知らなかった一人だったという思いから、中村さんは、娘のこと、自分が体験した現実を、もっと知ってほしい、考えてほしいとこの本を書いた。

脳死宣告は死亡宣告ではなく、脳死は死ではないと、そこから始まる新たな人生があるのだと、中村さんは身をもって書く。眠りつづけながら、すくすくと成長していった有里さんのこと、ともに生きた家族の姿が、この本のなかにある。

(6/21了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第39回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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