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ふがいない僕は空を見た(窪美澄)

ふがいない僕は空を見たふがいない僕は空を見た
(2010/07)
窪美澄

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「女による女のためのR-18文学賞」の大賞をとった人やとおしえてもらって、借りてきた。この賞をとった人の本は、ぱらぱらと読んできている(豊島ミホ、日向蓬、渡辺やよい、吉川トリコ…など)。

この本は、大賞受賞作の「ミクマリ」を巻頭におき、そこからつながる連作になっている。妊娠・出産、子育てや女性の健康をテーマとするフリーライターという著者の仕事柄もあるのか、「ミクマリ」に出てくる高校生・斉藤卓巳は助産院の息子で、助産師であるその母も書きこまれている。そこがよかった。
自宅が助産院で、「おれは人ひとりこの世に生み出すために、うめき、わめき、泣き叫ぶ女の人をみて育った」という卓巳。陣痛でうめく妊婦さんの仙骨をさするのも手慣れたもの。

巻末の「花粉・受粉」は、助産師である卓巳の母の話。自宅の助産院で、一見わがままに思えても、できるだけ産婦さんの希望を取り入れるようにしているのは、「お産をする場所で、自分がきちんと受けとめられているという実感があればあるほど、産婦さんの体と心は自然にゆるんで、お産がスムーズに進むからだ」(p.197)。

助産院をたずねてきて「自然に産みたい」という多くの産婦さんたちの言葉におぼえる、どうしようもない違和感。
▼…彼女たちが口にする自然、という言葉の軽さや弱さに、どうしようもない違和感を抱きながら、私はその気持ちを言葉に表すことができない。乱暴に言うなら、自然に産む覚悟をすることは、自然淘汰されてしまう命の存在をも認めることだ。…自然分娩でも、高度な医療機器に囲まれていても、お産には、温かい肉が裂け、熱い血が噴き出すような出来事もある。時には、母親や子どもも命を落とす。どんなに医療技術が発達したって、昔も今もお産が命がけであることは変わらないのだ。(pp.198-199)

自然、自然、自然という産婦さんを、むかしは力まかせに自分の意見のほうに向かせようとしたこともあった。けれど、自然分娩とは何かを頭でっかちに語れば語るほど、産婦さんはかたくなり、お産はスムーズにいかなくなった。

▼本当に伝えたいことはいつだってほんの少しで、しかも、大声でなくても、言葉でなくても伝わるのだ、と気付いたのは、つい最近のことだ。(p.200)

お産の進みぐあいで病院搬送になり、帝王切開することになった産婦さんが、帝王切開で産むなんて母親失格だと消え入りそうな声で言う。その産婦さんに「何言っているの。あなたは十分がんばったよ。母親失格かどうかなんて、死ぬまでわからないよ」と伝える私。

▼助産師という仕事をしていると、自然分娩に強いこだわりがあるように思われるのだけれど、本当のことをいえば、母親と赤んぼうが無事ならば、自然分娩だろうと、無痛分娩だろうと、どんな方法だってかまわない。一人でも多くの子どもを取り上げることを自分の手柄のようにはしたくないし、お産で起こったトラブルを押しつけ合うような真似もしたくない。毎日、眠らず、休まず、体と心をすりつぶすようにして子どもをとりあげているのは医者も助産師も同じだ。どんなに力を尽くしても、それでも助産師として手に負えない事態は起こる、そんなとき、医師の力を借りて、母親と子どもの命を守ってほしいと、そう思うことは間違っていることだろうか。(pp.203-204)

この助産院ではたらく若い助産師・みっちゃんの姿もよかった。
いろんなことが、ぐるぐるとうずまく物語。

(6/17了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第40回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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