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折れない葦―医療と福祉のはざまで生きる(京都新聞社)

折れない葦―医療と福祉のはざまで生きる折れない葦
―医療と福祉のはざまで生きる

(2007/03)
京都新聞社

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『異質の光』といっしょに借りてきた本。京都新聞で、2006年に連載された「折れない葦」をまとめたもの。4月に「尊厳死ってなんやねん?!」の勉強会で、桑山さんの話と、京都新聞の記者さんの報告があった。たぶんその記者さんもこの連載の取材班の一員。桑山さんも、この本の中に出てきた。

京都新聞の地元である京都や滋賀で、病や障害と向き合って生きる人たちを取材してきた言葉には、はっとするものがいくつもあった。

〈患者は思いやられる側でしかないというのは間違いで、家族全体を思いやる責務が私にある〉(p.14)──人工呼吸器の装着を拒否し、苦労しながらも工夫して一人暮らしをしている谷岡さんはALSを発症。手伝おうとする記者に〈こうやって苦労しているのも現状なので、見守って下さい〉(p.13)

「余命がどうとか分かりません。ただ普通の子と同じように、一日を楽しく過ごしてほしい」(p.63)──小児がんと闘う梨帆ちゃんのおかあさん。

「何のための福祉相談でしょうか。息子のように自分のことを上手に話せない人もいるのです」(p.115)──栄養失調で入院した病院で受けた生活保護を、仕事もないまま退院によって機械的に打ち切られ、餓死した男性の母が、市の責任を求めて提訴した裁判で語ったことば。
「子どもの味方は誰? 日本の法律は間違っている。未成年だから権利がないとか、子どもだからあれは無理、これも無理っていわれたら、どうしたらいいねん。弱者を守るのが法なのに」──里親宅で暮らす祐賀子さんは、子どもと親権者が対立した場合に、子どもが意思表明する機会がないことをうったえる。親権をもつ母のもとに父から届く養育費は祐賀子さんに届いていない。養育費があるなら、進学費用にあてたいと思うが、現状では手立てがない。

「健康な時はいい格好が言える。疲れると感情が変わる、顔に出る。相手も遠慮する。人を幸せにするには自分が幸せでないと。介護する人を大切にして、平静に患者にあたれるよう、環境をつくってほしい」(p.170)──ALSの妻を介護してきた夫。「どんな形でも生きたい」と望んだ妻は、人工呼吸器を装着することなく亡くなった。

「人間に無駄な存在という人がいるでしょうか。病になると、患者は弱く、迷いも出る。それをキュア(治すこと)することも含めたことが本当のキュア。医師には患者が望まないことでも、やらなければならない時がある」(p.176)──病院で30年間、救命にあたってきた外科医の田内さん。

「ある若い研修医は老人福祉施設で寝たきりの高齢者の診察の研修を経験していた。しかし声も掛けなかった。四肢まひで会話できない人を、何も分からない、意識がない人と見なしていた」…そうではない、とハッと気付く大きな経験、感動を覚えてほしい(p.189)──医学部を出たばかりの研修医を受け持つたび、脳梗塞による全身まひという最重度の障害で家族を明るく支える飛田さんの自宅に連れていくという、内科医の岡野さん。若い医師への思いは、岡野さん自身が飛田さんとの出会いから教えられたことでもあるという。

「昼夜逆転というのは介護する側の都合。おむつ漬けにして薬で寝てもらう訳です。認知症の人の側からのケアはまだ見えてきません。本当のケアはこれからです」「この人にいてほしいから介護が続けられる。自分のための介護かもしれませんね」(p.200)──認知症となり、生活のリズムが24時間周期ではなくなって、昼夜逆転した妻のリズムにあわせて生活する谷口さん。

"医療と福祉のはざま"で生きるいのち。そのはざまに私も同じようにいる、そういう社会に生きてるんやとつくづく思う。

(5/12了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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