読んだり、書いたり、編んだり 

きなりの雲(石田千)

きなりの雲きなりの雲
(2012/02/01)
石田千

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石田千は、最初の頃のエッセイ何冊かをおもしろいと思って読んでいた。途中の本で、なんかちがうと思い、あわん感じが残って、その後はあまり読んでいない。しかし最初に読んだ(おもしろかったなあ)という感じもあって、名前はおぼえていた。

こないだの「ブックマーク」で、雑誌『群像』に載った「きなりの雲」のことを書いてる人がいて、へぇー石田千の小説??と思い、調べたらその時点で本になっていた。図書館の予約もあまりついていなかったので、しばらく待って借りてきた。

セーターやら毛糸玉のカバー写真で、どんな話やろと思ったら、これは「編み物」が出てくるのだ。主人公のさみ子(フシギな名である)は、隣町の手芸店で編み物教室の講師をしたり、かつての先輩同僚が独立してもった店で編んだセーターを置いてもらったりして、ほそぼそと稼いでいる、らしい。それで一人で住んでいて食えるのかどうかと私は思ったりするが、築47年めになるアパートで、さっぱりと暮らせる程度ではあるらしい(話のどこかに、親が遺したオカネが多少あるようなことが書いてあった)。

私は「編み物」のことと、さみ子がアパートで育てる「アボカド」や「ゴーヤ」に気を取られながら読んでいたが、冒頭では男にふられて半年もドツボにはまり身体を壊してヨレヨレになったさみ子の姿が書いてあって、そのことが「さみ子の話」としてはかなりの比重でもあるらしい。

老若男女がつどう編み物教室の場面がおもしろかった。編み方も、編む動機も、編みたいものも、ほんまに人それぞれやなあと思った。
編み物教室を急に半年休んでいたさみ子が、「ご迷惑をおかけして、いまさら」と尻込みするのに対して、手芸店の店長さんはこう言うのだ。「…教えて教わることもあるのよ。望月さんは、それを覚えたらいいわ。」と。

手より口の動くひと。だまって聞いて編みつづけるひと。習うことはもうないでしょうというと、「ひとりで編むよりたのしいから」と言った男の子。編みすすめて気に入らないと、いさぎよくほどいて、またくりかえす小学生の女の子。

▼前後の肩をはいだり、脇線をとじたり、ボタンの配置をしたりのしあげのところだけは、数をこなしている方にも迷いがある。そこだけ、ゆっくり本を見ながら確かめながら、ていねいにすすめてもらう。
 独学でいると、早く仕上げたい気持ちが先になって、てきとうにすませ、いつまでも覚えない。だれかが見届けているだけで、おろそかにならず、確かな技術が身につく。(p.68)

独学の編み物で、てきとうにすませる雑子の気がある私には、おおっと思える。たしかに、見届けられていると、少していねいに仕事ができる気がする。

さみ子のアパートで月曜から金曜まで、通いで清掃している田中さんのこんなことばも心にのこる。「…年をとるとさ、人に会えるだけで、ありがたいんだよ。おたくさんくらいだと、そんなのあたりまえに思うだろうけどね。」

(3/27了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第39回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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