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海が呑む 3.11東日本大震災までの日本の津波の記憶(花輪莞爾、山浦玄嗣)

海が呑む 3.11東日本大震災までの日本の津波の記憶海が呑む 
3.11東日本大震災までの日本の津波の記憶

(2011/12/01)
花輪莞爾、山浦玄嗣

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図書館で、震災関連ということで本が集められて展示されていた中にあって、借りてみた本。

花輪莞爾がこれまでに書いてきた「巨大地震津波の痕跡を訪ねて書いた」4篇を編みなおし、それに山浦玄嗣の東日本大震災の体験記をおさめたもの。山浦さんは、聖書をケセン語に訳した方である(『イエスの言葉 ケセン語訳』)。

三陸海岸の綾里と大船渡(明治三陸地震、昭和三陸地震、チリ地震津波)、津軽半島と秋田の能代(日本海中部地震)、紀伊半島(南海地震)、奥尻島(日本海南部地震、北海道南西沖地震)について、花輪さんは現地へ赴き、その経験について話を聞いている。

津波でやってくる海水は、コールタールのように真っ黒だという描写。津波の前には海が異常に引いてゆくという現象はよく知られているというが、そうした現象なしにあっという間に津波が押し寄せた例もある。

特別寄稿として巻末におさめられた山浦さんの「3.11 巨大地震津波体験記」がよかった。その前に花輪さんが書き綴った「津波の記憶」についてを読んだあとだけに、その状況が少しは想像できる気がした。
▼津波災害は阪神・淡路大震災のような地震災害とは違い、瓦礫から救い出される人がほとんどいない。生か死しかないのである。(p.182)

山浦さん自身は、今回が津波を見た初めての経験だという。けれど、明治9年生まれの祖母から、明治と昭和の三陸地震の惨状を聞かされ続けてきたためか、山浦さんは海が立ち上がり、巨大な波が押し寄せてきて、そこを自分が逃げるという津波の悪夢を見続けてきた。

▼三陸海岸は津波によって歴史を刻んできた。ほぼ40年に1度ほどの大津波が襲来、人口の1割から2割を失う計算になる。一生の間に少なくとも1回か2回、多ければ3回は大津波に遭遇する。われわれの世界は、始めからそうできているのだ。…

 こんな民に「なぜ自分たちはこんな目に遭うのか」という問いは存在しない。四季が巡ってくるように、津波もやってくる。要は備えがあるか、ないかだけである。危ないところに家を建てれば流され、逃げ損なえば死ぬ。これが冷厳な事実であり、それ以上でも以下でもない。(pp.196-197)

キリスト者である山浦さんに対して、都会のジャーナリストが取材にやってきて、「判で押したように一様な質問」を投げかけた。山浦さんが予想もしなかったその問いは、被災者たちが「どうして自分たちはこんな目に遭うのか、神はなぜこんなむごいことをするのか」と思っているに違いない、それに対してキリスト者としてどうこたえますか、というものだった。

「私は猛烈に腹が立ってきた」と山浦さんは書き、そんな問いは、ここに住む者には存在しなかったのだと書きつける。生死も知れぬ大災害のなか、「なぜこんな目に」という恨み言は一切聞かなかったと。

なぜ都会から来る人々は口を揃えて、われわれが夢にも思っていないこんな質問を、こうもしつこく繰り返すのだろうと山浦さんは考える。そして「多分、暇だからだな」と思う。

▼われわれは生き延びるのに精一杯だ。寒さの中ですることもなく、支給品の毛布にくるまって震えるだけでも、心は猛烈に忙しい。失ったものがあまりに巨大で、ショックで崩れそうな自分を支えるだけで精力が要る。「なぜ」などと悠長な、役立たずなことを考えるゆとりはないのである。(pp.193-194)

「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」、十字架につけられたイエスが、その断末魔の苦しい息の下で叫んだ言葉だという、有名な言葉。何の予備知識もなしにこれを聞けば、都会のジャーナリストのように、絶望の言葉と思えるだろう。この言葉の由来について山浦さんは記し、最後にこう書く。

「神さまんす、神さまんす、なしておらァごどォお見捨てなさりァんしたれ!」
 だがこれは決して絶望の叫びでも、恨みの声でもない。
 呆然と立ちつくす私の方をがっちりとつかんで、イエスは言う。
 「おい、元気をだせ、この生き死人め。このおれは死んでもまた立ち上がったのだぞ。そのおれがついているんだ! さあ、涙をふけ。勇気を出して、一緒にまた立ち上がろう。お前のやるべきことが、そら、見えるだろう!」(p.213)

この話を読んで、私は山浦さんのケセン語訳を読んでみたくなった。

(3/25了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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