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佐賀のがばいばあちゃん/がばいばあちゃん 佐賀から広島へ めざせ甲子園(島田洋七)

佐賀のがばいばあちゃん (徳間文庫) がばいばあちゃん 佐賀から広島へ めざせ甲子園 (集英社文庫)

酒井順子の『おばあさんの魂』で出てきた「がばいばあちゃん」の話がえらいおもしろかったので、図書館で借りてきて読んでみた。「がばいばあちゃん」で検索すると、何匹目のドジョウというやつか、ずいぶんいろんな本がヒットするのだった。

「がばいばあちゃん」こと、おさのさんは1900年うまれ。元号でいえば明治33年、津田梅子が女子英学塾をつくり、吉岡弥生が東京女医学校をつくった年でもある。

広島でうまれた昭広(洋七の本名)が、佐賀のおさのさんに引き取られることになったのは、まだ若かった父が原爆症で亡くなったことが大きい。母は昭広と兄、ふたりの子を露天の居酒屋をいとなんで養おうとしたが、ちょろちょろする幼い子どもがいては難しかったのだ。
おさのさんは、ただ歩かない。腰にひもをつけた磁石をさげて、鉄クズを拾って歩く。近くの川には水面すれすれに棒が渡してあり、その棒に引っかかる食べものから燃料まで拾う。川の上流には市場があり、売り物にならん野菜や、ちょっといたんだ野菜、川で洗っていて手がすべった野菜などが流れてくる。

おさのさんは川を「スーパーマーケット」と呼び、「わざわざ配達してくれると」「勘定せんでよか」と川をのぞいては笑っていたという。たまに何も引っかからない日があると「今日は、スーパー休みか」と残念がる。お盆には精霊流しで流れてくる船から果物やお菓子をいただき、亡くなった人の霊が乗っているという船は手を合わせてまた川に流していた。

「ばあちゃん、腹へった!」と叫んで帰ってきた昭広に、「気のせいや」と言い、もう寝てしまえと言われて布団に入っても、やっぱり空腹で目がさめて「やっぱり、お腹減った」と言う昭広に、「夢や」と言うたおさのさん。

冬の寒さをあたためてくれる湯たんぽは、客が来ればそのお湯でお茶をいれ、遠足のときには水筒にもなった。おさのさんの暮らしは、まるで『TOKYO 0円ハウス』である。「幸せは、お金が決めるものじゃない」と、おさのさんは「明るい貧乏」を推奨する。

▼うちは明るい貧乏だからよか。
 それも、最近貧乏になったのと違うから、心配せんでもよか。
 自信を持ちなさい。
 うちは先祖代々貧乏だから。
 第一、金持ちは大変と。
 いいもの食べたり、旅行に行ったり、忙しい。
 それに、いい服着て歩くから、こける時も気ぃつけてこけないとダメだし。(p.53)

この「がばいばあちゃん」本の1冊目『佐賀のがばいばあちゃん』では全く登場しなかったが、昭広が佐賀から広島へ戻った日々を書いた続編『佐賀から広島へ めざせ甲子園』では、おさのさんの末息子アラタちゃんが登場する。佐賀で、昭広は、おさのさんとアラタちゃんと3人で暮らしていた。7人きょうだいの末っ子アラタちゃんは小さい頃に事故で頭を打って知的障害になり、時々どっかへ行ってしまったり、発作を起こしたりだったそうだ。

「アラタちゃんには悪かばってん、七人も育てたら一人くらいは犠牲者は出る」「それくらいの気持でおらんと、人生はやっていけん」と、ばあちゃんはもらしたことがあるという。夫を42歳でなくしたとき、おさのさんは、娘2人(昭広のかあちゃんと、喜佐子おばちゃん)に「もう働け」と学校を途中で辞めさせた自分がつらいと言っていたと。

▼「二日働いたら千円になる。それで米を買う。味噌を買う。醤油を買う。それがあったら死なん。おかずはあとからついてくる。がっはっは」(pp.62-63)

洋七が「心のあり方で幸せは決まる」「心の持ちようや」と書き、「ニートは働け」と書くのは、ちょっとばかり引っかかるけど、笑いのあふれる、おさのさんの暮らしの知恵にみちた話はよかった。おもしろかった。

(3/7了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第39回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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