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僕は、そして僕たちはどう生きるか(梨木香歩)

僕は、そして僕たちはどう生きるか僕は、そして僕たちはどう生きるか
(2011/04)
梨木香歩

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こんどの「ブックマーク」に、この本のことを書いている人が2人いて、私も借りてきて読んでみた。吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』を下敷きにした作品らしいことは、タイトルと、ぱらっとめくって出てくる「コペル」でわかる。この本で「コペル」とよばれているのは、「僕」。

この小説は、時々ノートに向かっていろいろなことを書きつける僕=コペルが、「あの日のこと、そしてその後分かったこと等、一連の、僕の人生に重大な影響を与えたと確信している出来事」を書いたもの、というかたちをとっている。

母がやや遠方の大学に赴任してそこの職員宿舎に入り、体調を狂わせがちな母を気遣って父もそちらにいることが多くなり、14歳のコペルは、いま一人暮らしだ。こないだ読んだ『青いリボン』で出てきた高2の依子は、やはり両親が家を離れる機会に、一人暮らしではなく、友だちの家の居候になってたなと思い出したりする。
吉野源三郎のコペル君の話は何度か読んだことがあるけど、どんな話やったっけなーと思いながら、読んでいって、本の中ほどで、かなりびっくりする。「インジャの身の上に起こったこと」。これって、この小説では「世の中、セックスと関係なく生きていくことはできない」というタイトルをつけてあるが、理論社がよりみちパン!セで出してた、あの本のことでしょう。

私はあの本を読んだことがあって、理論社問題というのも知って、それでまた読みなおしてみたりもしたけれど、何がどうよくないのか、どうもぴんとこなかった。「回収・絶版」運動の側の文章も取り寄せて読んでみたけれど、あまり説得されなかった。

が、この「インジャの身の上に起こったこと」を読んで、むむむという気にはなった。また両者とも、読んでみるかと思った。

事情を知った僕は、こんなことを書く。
▼自分は何が好きで何が嫌いか。他人がどう言っているか、定評のある出版社が何を出しているか、部数の多い新聞がどう言っているか、じゃない、他ならぬ自分はどう感じているのか。(p.143)

そして、物語の終盤にいたって、もういちどびっくりした。コペルの友人、ユージンが学校へ行かなくなったきっかけのこと。「あれよあれよという間に事が決まっていく」その勢いに流されたというユージンは、自分は群れから離れて考える必要があった、と言う。

そのユージンの話を聞いて、コペルは絶望的な気分になる。
▼僕にはもう自信がなかった。
 自分が、いざとなったら親友さえ裏切って大勢の側につく人間なんだと思うと。
 戦時中ナチスに逆らって、ユダヤ人たちを匿った人々や彼等を逃がした人々の記事を読んだときのことを思い出した。感動して勇気が出て、そういう人たちがいたことを同じ人間として誇らしくも嬉しくも思ったりしたものだった。当然、自分もそういう人間の一人なんだと無意識に思っていた。
 でも、僕にはもう、そういう無邪気な確信が持てない。(p.243)

コペルが「百パーセントの勝ちはなくても、最後の最後まで、諦めない戦い方」や、「人が生きるために、群れは必要だ」とゆるやかで加減のいい群れについて語るところで物語は終わる。

ちょっとアタマでっかちな気もしなくはなかったけど、確かに問題作ではあった。

(2/26了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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