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ぼくは悪党になりたい(笹生陽子)

ぼくは悪党になりたいぼくは悪党になりたい
(2007/06)
笹生陽子

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『きのう、火星に行った。』を読んだら、また笹生陽子の本が読みたくなって、17歳のエイジが主人公の話を借りてきた。これもまた、上の子の話。かぎりなく自己中心的な母親は海外長期出張に出かけ、高2のエイジは、10歳の弟ヒロトと2人で2ヶ月ばかりを暮らす。「百パーセントの状態を望みさえしなければ、家事と学業の両立は案外たやすいものだと思う。ぼくはそこそこ家事をこなして、その合間にちょこっとベンキョウする。」(p.25)

エイジの母は、いわゆる未婚の母で、当時付き合っていた男の子どもをそれぞれ身ごもり、一人で勝手に産んで育ててきた。エイジとヒロトは、父親であるところの精子提供者が違う異父きょうだい。家庭のメンバーとして父親は登録されていないが、父親そのものが存在しないわけじゃない。母が長期の海外出張に出て間もなく、エイジの修学旅行を前に、ヒロトが水ぼうそうにかかり、「緊急時用」のアドレス帳にリストされている連絡先(母が培ってきた人脈が網羅されている)から、看病してもらう人をあたった。そしてヒットしたのが杉尾さん。

この人は、母とはどういう関わりがあるのか、もしや母とデキていた人なのかと、エイジは仮説をたててみる。杉尾さんの年齢と、母の年齢とを差し引きし、どうやらこの人はヒロトの父親ではないかと突っ込んでみたエイジは、衝撃の事実を知る。
「知るってことは、想像力がそのぶん減るってことじゃねぇ?」

幼馴染みの羊谷の言葉を思い出すエイジ。知ってしまったことで、そのぶん逃げ道の数が減っていく。うっかりしたことで、誰にも相談できないことが自業自得で倍加した。なにもする気がないわりに、頭がさえて眠れない。もやもや、うつうつとした日々がすぎるにつれ、「いったい、いつまでこんなところにいなくちゃいけないんだろう?」という思いがつのる。

▼今まで、ぼくはぼくなりにやるだけのことはやってきたのだ。シングルマザーの家に生まれた長男としての自覚を持って、子供らしくない我慢もしたし、努力もしたし、小芝居もした。…
生きたいように生きているのはぼくの周囲の人たちで、その輪の中で、ぼく一人だけが貧乏くじをひいている。おかげで弱冠17歳にしてストレス貯金が満期になった。これくらいの暴挙は大目に見てもらわないと割に合わない。どのみち、ぼくはまっとうに生きる資格をとうに失っている。姑息でけっこう。ビバ悪党。それが外道の子供の生きる道。(p.171)

エイジは家を出ることにした。
行き先はひみつ。
帰る予定はない。
しがらみのない自由な世界への脱出のはずだった。開けゴマで解放されるはずだった。

エイジのうずまく気持ち、「上の子」である私には、なんかわかるなーと思う話だった。

(2/14了)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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