読んだり、書いたり、編んだり 

青いリボン(大島真寿美)

青いリボン青いリボン
(2011/12/06)
大島真寿美

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年明けに、妙にハマってぐるぐると3周ほど読んでいた大島真寿美の『虹色天気雨』『ビターシュガー』のことは、『We』176号の「乱読大魔王日記」で書いた。

この大島作品が原作のドラマを、昨秋テレビでやっていたと妹がおしえてくれた。「ドラマになってたんか」と私はあとから知ったが、「本もあるんやー」と妹は原作のことを知らなかった。ほかに何人かからも、ドラマをみた、でも本があるのは知らなんだと聞いた。有川浩の『阪急電車』もそうだったが、本がいいと、映像のほうを見るかどうかと迷う。私のアタマの中でくりひろげられている会話と風景のイメージを、なんとなくこわしたくない。

もうちょっと大島本を読みたくて、図書館で借りてきた『青いリボン』。高2の依子の両親は、もうずっと長いこと"家庭内別居"だった。びみょうな距離を保ちながら続いてきた生活が、父の転勤と母の海外長期出張を機に、動く。

父の転勤先の福岡へ行くか、母方の祖父母のいる北海道へ行くか、学校は転校すればとか休学すればと、両親それぞれの勝手な話に、「学校を変わりたくない」依子は、親友の梢との相談で、梢のうちへ居候することになる。

核家族の一人っ子のうえに、親がそんなびみょうな距離でいて、ずっと一人で暮らしているようだった依子は、梢に、その妹と兄、両親、おじいちゃん、おばあちゃんのいる大家族のなかで最初は戸惑う。
▼この家は、うちとなんてちがうんだろう。
 いつもごちゃごちゃと人が入り乱れていて、しょっちゅう誰かが誰かの名を呼び、しょっちゅう誰かが誰かを探してる。誰かが誰かに用事を頼み、頼まれた方は頼まれた方で、迷惑がって誰かに押しつけたり、シカトしてみたり、すすんで手伝ってたり、かと思えばトイレの前でどっちが先か喧嘩してみたり、あれこれ文句を言ったり。
 迂回せずに平気でぶつかり、平気で離れる。
 平気で近づき、平気で関わる。(p.55)

自宅で暮らしていたときには、一人の時間がものすごく長かった。それが梢の家に住みだしてから、一人でいられる時間はほとんどお風呂の中と布団の中だけになり、しかしその環境に、依子はみるみる慣れてしまう。ざわざわと常に誰かの気配のある場を、心の底で少しうっとうしいと思い、そのうっとうしさを新鮮に感じる依子。「ここには生まれなかった私が、ここで生まれたかもしれない私をリアルに想像してみたりする。」

ほらきょとんとしてる、また依ちゃんのきょとんが出た、なんでそんな不思議そうな顔をするのと梢や妹の多美ちゃんに言われて、ふいに依子は思う。

▼…私にはすべてのことが、とにかくあらゆることが不思議で不思議で仕方がないのかもしれない、という考えが頭をよぎり、口をつぐんだ。
 なんとなく、そんな感じが、したのだ。
 そう。私にとって世界はいつもいつも不思議で、何もかも不思議な感じで出来ていて、つまり、不思議であって当たり前で、だから、びっくりしつつも、それが何故か考えない。考えちゃいけない。考えてもしょうがない。と、どこかで諦めているような機が…しなくもない。諦める? 諦めるって何に? 世界の不思議に? (pp.85-86)

長く"家庭内別居"を続けていた両親は、離婚にむけて動き出した。依子は、両親それぞれの勝手な話を聞かされながら、似たもの夫婦だと思う。

ある日、父親に「べつにばらばらの家族だっていいじゃないか」「けっこう、うまくいってたじゃないか」といわれて、「なに勝手なこと言ってんのよ」と依子が語った言葉には、ううっと刺された。家族って何やろと思った。

▼「うまくいってたなんてよく言うね。どこがうまくいってたのよ? うちなんてね、あんなの家族じゃないよ。お父さんとお母さんなんて、いっつも自分のことだけ優先してさ。あたしのことなんて、二の次でさ。三の次でさ。四の次でさ。ちっともしゃべんないから、二人揃った時はどっちの顔色もうかがわなくちゃならないしさ。誰がごはん作ってくれるのかもよくわかんないしさ。誰に授業参観頼めばいいのかわかんないしさ。なんかも、どっちも勝手でさ。わがままだしさ。都合のいい時だけ、親だとか言ってさ。こっち来いとか言ってさ。サイテー」(p.101)

自分の家族しか知らなかったころは、こんなもんかと思っていたのが、他の家族を知って、そんなもんじゃないのかもしれないと思う気持ちを自覚する依子。でも梢の家こそが理想の家族だと思ったわけでもない。梢のお母さんが「依子ちゃんのお母さんって、面白いわよね」と言い、「家庭内別居こそしてないけど、うちだっておかしな家でしょ」と言うのを聞いて、自分がこうだと思っていた家族が他人からはそう見えるのかということも、自分がこうだと思っていたよその家のまた違う面も、依子は知る。

日々の生活のなかにある、小さな気づき。そういうのが丁寧に積みあげられたような小説。

(2/8了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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