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「東北」再生―その土地をはじまりの場所へ(赤坂憲雄、小熊英二、山内明美)

「東北」再生―その土地をはじまりの場所へ「東北」再生
―その土地をはじまりの場所へ

(2011/07/01)
赤坂憲雄、小熊英二、山内明美

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『こども東北学』のあと、この本を借りてきた。昨年の5月1日、3月11日から51日目に、半ば公開のかたちでおこなわれた赤坂憲雄+小熊英二+山内明美の鼎談を「I」に、山内と小熊の既発表のテキストをもとに書かれた2つの文章を「II」に、それぞれ収録した本。

「最後[ケガヅ]の場所からの思想」の末尾で、山内はこう書いている。
▼…未来の東北を奪還する手だてがあるとすれば、それはたぶん、「ほんたうの農業と漁業」のあり方を模索することだろうと思う。その道のりは、これまでとは比較にならないほど過酷だろうと思う。それでも、東北ならできると思う。ここは、地獄絵図のような生き死にの紡がれた歴史の中で、くり返し死の淵から再生をとげてきた場所だからだ。
 巨大な樹木が倒れたあと、無数の蘖[ひこばえ]があらわれるように、「東北」は、きっと再生する。(pp.122-123)
鼎談のなかで、山内はこう語ってもいた。
▼私個人としては、東北がどんなに低開発と呼ばれようとも、一次産業で立っていける場所にしたいのです。今回被災した地域は、「ケガチ」と呼ばれる飢饉の頻発地帯です。そこに暮らす日とは「ケガヅ」と言いますが、いずれにしても、文字どおり「ケ」、つまり日常の、ことに食料が欠けがちな場所なのです。地震も津波も冷害もある。陸で生きるのも浜で生きるのも過酷な場所です。過去の歴史のなかでどれほど津波が起きてきたのか、私たちはあらためて知りましたが、それでも、漁師が漁をやめたことはありませんでした。過酷な自然に対峙しながら、ここまで続いてきたのです。いま、私たちは、この深刻な汚染を発端として、将来へ向けてどんな「生のあり方」が可能なのか、未来への責任とともに考える時期にあるのだと思います。(p.46)

3人は、東北はどのような場所としてこれまであったのかと共に、この先どんな「生のあり方」が可能なのか、新しい社会をどのように構想していくのか、と語りあう。

赤坂は、自分たちが学問としてやってきたことのなかに、社会の批判は山ほどあったけれど、どんな世界をつくっていったらいいのか、これからの社会のあり方を大きな構想力をもって提示することはしてこなかったと振り返る。

小熊は、ナショナリズムに関して、「がんばれ日本」や「日本の転機」といった論調が東京のマスメディアを中心として出てきたが、阪神大震災のときを思い出しても、あのときは「がんばれ日本」という形にはならなかったし、例えば同じ規模の地震が沖縄で起きたとしても「がんばれ沖縄」にはなっても「がんばれ日本」にはならないのではと書く。それは、東京の政治家やビジネスマンやマスメディア関連の人も揺れて、放射能のキケンを感じたからではないかと。
▼メディアを中心として人口の三割が集まっている東京圏が危機に陥らないと、そういう形にはならないというのが正直な印象です。(pp.90-91)

3人の語りは、またあるのかもしれない。時間が経つにつれて、変わっていくこともたくさんあるだろうと思う。けれど、この51日目の語りを読んで、私自身のなかにもやもやと残る"感じ"を、ときどきこれを読みかえして、自分でしっかり感じたいと思った。

そこのところで、赤坂の「現場の声」と「よそ者」の思考についてのこの一節は、遠くにいる私にとって、そうなのかもしれない、と思えた。

▼今回本当に僕は、現場ってなんだろうなって思いました。現場の声が正しいなんて本当に思えない。でも現場の声を大事にしたい。常に引き裂かれて、知らん顔したり、寄り添った顔したり、自分でも実にいい加減だと思いながら、それしかできないのかもしれないと思っています。(p.103)

(1/18了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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