読んだり、書いたり、編んだり 

こども東北学(山内明美)

こども東北学こども東北学
(2011/11/17)
山内明美

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12月に借りてきたときに半分くらいまで読んで、それから1度延長して、そろそろ返す日が近づいて、またてっぺんから読む。『フクシマ論』を読んだあとだからか、本の見た目はだいぶ違うけど、この本も同じことを書いてるなと思った。

「まん中じゃないところにも目を向けてみよう」「ほんとうに、まん中なんてあるのかな」という問いを含んだ"東北学"。世界中にある《東北》=まん中じゃないところ、について考えること。それは、社会がどんな仕組みでつくられ、動いているのかを、自分の目で見て、考えること。

▼…むかしから冷害をはじめ、大きな地震や津波が来ることは多くのひとたちが知っていた。そしてそのつど、背負った傷を必死に手当して、一からやり直してきた。そのことだけでも生死をかけたことだったのに、それに加えて、原子力発電所がこの土地に建てられたのはなぜなのだろう。
 わたしたちが、東北に住まいながら、持続的に暮らしを成り立たせるにはどうしたらよいのかという問題が、そこにはある。…東北という土地の暮らしが、どんなふうにあれば、「田舎」の、そして同時に「都会」の人々が「豊か」に暮らせるのだろうか。…(p.124)
山内さんが生まれた1970年代半ば頃から減反政策が強化され、農業だけで食べていくことがとても難しくなった。山内さんちでも、じわじわと田んぼを減らし、多角経営にかわっていく。お父さんは家の敷地にちいさな部品工場をはじめ、葉タバコは労動力が追いつかないのでやめ、飼っている牛の頭数がふえた。いまは、農業を継いだ弟さんが200頭の牛の世話をし、ご両親は零細の自動車部品工場をやっているという。

1990年、中学に入った頃、お父さんから「自分で食うコメは自分でつくれ」と山内さんは小さな田んぼを一枚もらう。手抜きの子ども百姓で、それでも秋には150キロぐらいのお米がとれた。百姓になるのもわるくないなあ、食いっぱぐれることがない、とそのときの山内さんは思うのだが、その数年後、安定した農業をやっていくことはとても難しいという現実を目の当たりにする。

1993年、「時代が時代なら、餓死者がたくさんでて、村が全滅しただろう」というほどひどかった東北大凶作のとき(タイ米が大量に輸入されたあのときだ)、山内さんは「おまえは、いまがそんな時代なら、娘身売りになったかもしれない」と年寄りに笑って言われる。

もとは熱帯から亜熱帯性植物である稲を、寒冷地で育てる努力は近代になってから続いてきた。東北や北陸が米どころというのは、気候からしても、そもそも当たり前のことではなかった。江戸時代には「白川以北、ひと山百文」と呼ばれ、土地の価値がないとさげすまれた東北が、穀倉地帯となっていく過程には、国策も重なる。コシヒカリは、戦時中の1944年に食糧増産政策のために改良されてできた品種だということを私は初めて知る。

そして山内さんは女の人で、女にとっての「家」や「村」や「掟」のことも書いている。本家の大叔母さんの話を引きつつ、自分にとってもそれはたしかに存在していたという。

▼…家の跡継ぎではない「どこかの家へ嫁ぐ」という運命にある女性が、高い学歴を得ることへの無言の批難というようなものも、根強く存在していた。学歴を得ようとする行為は、他人から抜きん出ようとする欲望であるとみなされているようだった。奢っているという眼差しさえあった。学歴社会があたり前の世の中だと、ちょっとびっくりするようなことだけれど三十年くらい前の地方農村ならば、そういう価値観が根強く存在していた。
 
 このことは、わたしが、ゆくゆく東京の大学へ進学するときにも、依然として足かせになっていた。女性の自分が、将来を自由に思い描くことは「家」や村の帰阪に対する「抵抗」ではないか、と自分でも思ってしまうのだ。(p.91)

女であるということがもたらす「足かせ」はまだ私にも分かる気がするけれど、東京という都会へ出てきて、故郷の言葉で話せないという感じ、主語を言い慣れない「わたし」にすることの違和感について山内さんが書いていることは、私には想像するしかなくて、大阪に生まれていまも大阪に住み(大阪を3年間離れたことはあるが)、どこへ行っても自分の使うことばに大きな違和感をもったことのない私には、実感としてはわからないなあと思った。

わからない、ということを自分はきちんともっていよう、と思った。

よりみちパン!セは、いつの間にか理論社からイースト・プレスに引っ越していた。

(1/16了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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