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大津波と原発(内田樹、中沢新一、平川克美)

大津波と原発大津波と原発
(2011/05/17)
内田樹、中沢新一、平川克美

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暮れの図書館で、面陳されていたのを見かけて借りてきた。3月11日から3週間ほどだった4月5日に、Ustreamで配信される「ラジオデイズ」という番組で三人が大震災と原発事故について語り合う機会をもった。それを本にしたというもの。

いくつか印象に残ったうちのひとつは、内田が子どもの頃の社会の教科書に「日本の電力は水力発電が主体です」って書いてあったでしょ、という話。

▼内田…「日本は急峻な山岳があって、雨量も多く、それが世界に類を見ない水力資源を作り出しています」って、ダムの絵が描いてあるの。それがいい絵でさ。山があって、そこに雨雲からじゃんじゃん雨が降っててさ。ダムでタービン回して発電して、そこから送電線がずーっと続いて、都会まで通じてるの。そこでみんなが電灯の下でにこにこ笑っている。ぼくはその説明を読んでさ、ああ日本に生まれて本当によかったと思ってたんだよ。だっていいじゃない。山から流れてくる水でクルクルと発電機を回すだけで電気ができて、もうまったく環境に対する負荷がないって。山が急で雨の多い国って、なんて素晴らしいんだろうと、幸せな気分だったのね。(p.25)

1950年生まれの内田が子どもの頃のカリキュラムがどんなものかわからないが、それが小学校5~6年か中学生の頃だったとして、1960年代の前半になる。この内田の話は、それがあるとき「これからは火力だ」という話になり、次は「原子力だ」と変わっていったのだと続く。そのことを振り返って内田はこう言う。
▼…わかったのはさ、新しいテクノロジーを持ち込むとき、そのたんびに「これは完全無欠の素晴らしいエネルギー源だ」っていうこと。そして、ぼくらはそのつどそれにころりと騙されてきたってこと。火力にシフトするときは、水力発電がいかにハイコストで、無駄の多い発電方法かということがうるさく言われた。原子力にシフトするときは、火力発電がいかにハイコストで、入りすくな発電方法かということがうるさく言われた。
 だから、つぎに何が来ても、太陽光でも地熱でもバイオマスでも、ぜったいそれは「完全無欠のエネルギー源だ」っていう鳴り物入りで喧伝されるとぼくは思うよ。…(pp.26-27)

そのことをふまえて内田は、テクノロジーの未来予測や新しいテクノロジーの導入に際しては「人間というのは、つねに安全性を過大評価し、コストを過小評価する生き物」であるという人間学的事実を勘定に入れて制度設計すべきだと言う。

私は、中学1年のときの地理の教科書が「進出」「侵略」問題で騒がれたものだった、という体験のせいか、社会科の教科書や資料集、ノート、ファイルの一部はこれまでなんとなくとってある(妹の分もいくつか)。それ以外には、男女別修時代の家庭科の教科書とか。長いことしまい込んだままだが、自分はどんなことが書いてある教科書でベンキョウしたのか、というのは今更みてみたい。

国のいうことは時に大きく変わるし、国そのものが滅ぶこともある、ということを主には社会科で習ってきたんよなあと思うが、目の前にみえるのは、なんだか違う光景に思える。

巻末では「鼎談までの経緯とその後」として、平川がこう書いている。
▼…今回の問題で、原発を損得の問題、つまりは経済効率という観点からのみ見ることの背後にどれほど重大な見落としがあったのかが露わになりました。この問題を考えるということは、私たちの世界には、私たちが想像もできないような出来事があり得るという科学技術の限界の問題について考えることであり、同時に人間はよかれと思ってしていても、必ず過ちを犯すものだという人間の行動の限界について理解を深めることだろうと思います。私たちは、なにが解っていて、なにができるのかということを考えると同時に、なにが解らなくて、なにができないのかということを考える謙虚さを欠いていたのです。…(p.114)

「想像もできないような出来事」に思いを飛ばすことができるには、なにが要るんやろと思う。

(12/30了)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第44回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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