読んだり、書いたり、編んだり 

活字と自活(荻原魚雷)

活字と自活活字と自活
(2010/07/13)
荻原魚雷

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『本と怠け者』と前後して届いたこっちの本も、たらたらと読んでいた。『古本暮らし』という本を出したあと、二冊目の単行本をつくろうとしていたのが、いろいろあって白紙になり、それが本の雑誌社から「うちで出しませんか」と打診され、しかも立ち消えになった本の担当だった人が本の雑誌社にはいって、この本の編集担当になった、という本(読んだことがあるような…と探したら、出た頃に『古本暮らし』を読んでいた)。

1 高円寺暮らし
2 わたしの本棚
3 夜型生活入門

という3つのパートに、なにやら時代をさかのぼったような写真があちこちに入って(これは荻原さんの本棚なんかなアと思われる写真もちらほらとある)、デザイナーさんが「雑誌みたいな本にしたい」と言ったとおり、ちょっと厚い、字の多い雑誌みたいにも見える本になっている。

高円寺で暮らしつづけていることや、勤め人にならなかった暮らしのことのほか、いろんな人の本(古本が多い)を読んだ話があれこれと書いてあって、荻原さんが読んでどう思ったかというのもたらたらと書いてある。出てくる本がややシブいこともあって、読んでいて、坪内祐三の『ストリートワイズ』とか『三茶日記』を思い出すところがあった。
「2 わたしの本棚」のなかで、関川夏央の『「名探偵」に名前はいらない』に、「学習塾を経営し、原発に労働者を送りこむヤクザの話」が入っているというのを読んで、最近『ヤクザと原発』という本が出てたっけなーと思った。荻原さんは「ここ数年、階層社会、格差社会という言葉がしきりにいわれているが、関川作品では70年代末からすでにそのことをとらえていた」(p.83)と書きとめている。

杉山平一の『低く翔べ』を、仕事のあいまにつまみ読みしながら、荻原さんはこんなことを書く。
▼正しい意見をいうことはたやすいが、その意見を通すことはむずかしい。
 自分の考えですら、腹が減っていたり、食うに困る状況になったら、おもわぬ方向に変ってしまうかもしれない。まあ、そんなことをいちいち気にしていたら、何もいえなくなってしまう。
 大げさなことはいわず、低い声でしゃべる。そうするとなかなか耳を傾けてもらえない。
 それでも杉山平一は静かな、低い声で自らの意見を語りつづけようとする。(p.213)

そして、「健康」というタイトルの文章を引いてある。《有無をいわせぬ、平和とか聖戦とか、きれいごとが出てくるときは、嘘つけ、と私は呟く》などと。

巻末の表題作「活字と自活」は、荻原さん41歳の時、たぶん去年書かれたものだ。もとは「この十年」と題して書いたものだという。この十年の、荻原さんの愚痴のようなものが書いてある。この「活字と自活」の前のところまでにも、30をすぎ、40が近くなり、40になって、昔は読んでもぴんとこなかったことが分かるなあと思うようになったとか、10代や20代の頃にはこんなことを考えていたが今は…といった話があちらこちらに書いてあって、私も、あーそれわかるなーと思うことがいろいろとあった。

▼「三十歳まで続けることができればどうにかなる」という言葉の意味はわかるようになった。そのくらいの齢まで続けていると、ほかの選択肢がどんどんなくなってくる。
 どんな仕事にも、向き不向きがある。
 やりたいことを考えるのもいいが、やりたくないことを考えるのもいいのではないかと思う。
 冷静に自分の欠陥、欠点を見つめれば、できないことの範囲が定まってくる。
 おそらく好きな仕事に就くことよりも、自分のやっている仕事を好きになることのほうが簡単である。

 そのことを昔の自分に教えてやりたい。(pp.246-247)

ふと、「路頭に迷う覚悟があれば」と、20年ほど前に先輩から言われた言葉を思い出す。その頃の自分に「覚悟」があったとは思わないが、先輩にそう言われた道を選んで、そこからまた転々としてきたなーと思う。

(12/23了)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第40回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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