読んだり、書いたり、編んだり 

本と怠け者(荻原魚雷)

本と怠け者本と怠け者
(2011/09/07)
荻原魚雷

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図書館で予約待ちしていたこの文庫と、前後して『活字と自活』の本がまわってきた。こっちの文庫は、うしろに予約待ちの人がいて、先に読む。

なぜか私のアタマの中では、この本の荻原魚雷さんと岡崎武志さんがごっちゃになっているのだった(古本方面のことを書いてる人、という括りになっている)。いまさら気づいたが、荻原さんは同い年の人だった(岡崎さんは、ちょうどひとまわり上)。学生の頃からフリーライターとして仕事を始め、以来20年あまりという魚雷さん。文庫カバーの袖には「なかなか生計が立てられず、アルバイトで食いつなぎ、現在に至る」とある。

この本で紹介されるのは、魚雷さんの好きな作家たち、古本のなかに脈々と生息する「怠け者」。そのエッセイを、私もたらりたらりと読みながら、魚雷さんが○歳の頃にこんなことを考えていたとか○歳の頃にどうだったとかいうのを読んでは(その頃の自分は、どこで何をしてたっけな)と思い出したりしていた。

▼希望をいえば、好きなだけ本を読んで、好きなだけ寝ていたい。
 欲をいえば、酒も飲みたい。
 もっと欲をいえば、なるべくやりたくないことをやらず、ぐずぐず、だらだらしていたい。(p.9)

食っていくためには、あまりやりたくないこともサクサクとこなさなければならなかったりする。私は、たぶん人に比べれば好きなだけ本を読んでいるほうだとは思うが、『We』を出して、自分も食っていくためには、わりこむ仕事の時間もそれなりにある。2ヶ月にいちどくらい「カスミを食って生きられるなら『We』は続けられるのかも…」と、せんないことを思う。
魚雷さんの古本話を読んでいて、読んでみたいなーと思った本がたくさんあった。その中でとくに、築添正生の『いまそかりし昔』(りいぶる・とふん)、臼井吉見の『あたりまえのこと』に入っているという「戦中派の発言」、松田道雄の『日常を愛する』をメモする。

臼井吉見のエッセイで自分の戦争観が変わり、『若者を見殺しにする国』で平和観が変わった、衝撃だったという魚雷さんはこう書く。

▼寝る場所もなく、ただひたすら搾取される「平和」と、「食って、着て、寝るところのある軍隊生活」を送れる「戦争」と、どちらがいいのか。(p.89)

私が、『育児の百科』とか『私は赤ちゃん』の人として知っていた松田道雄を、魚雷さんは『現代日本思想大系 アナーキズム』の編集解説者として知ったという。そんな面もあるのかと初めて知る。その松田のエッセイに「おだやかとまとも」というのがあるそうだ。それを読んだ魚雷さんの弁。

▼どんな立派な意見にも耐用年数がある。くりかえし同じようなことを表明していれば、聞いている人にあきられる。まともなことが通らないから、いらいらして、声高になる。そのことにより、悪感情すらいだかせてしまう。(p.115)

この本に引かれている「まともなことを、おだやかにいうことはむずかしい」という松田道雄の一節を読みながら、鶴見俊輔が書いていた言葉を思い出す。

「市民運動は、担い手が自分の暮らしの中に新しい発見をもつことを通して続く。そうでないと続かない。」(『ちいさな理想』

穏やかに言っていては通らない、伝わらないこともあるのだろうと思う。怒りといらだちの中で発する言葉には勢いもつく。けれど、そのために伝わらなくなるものも、たぶんあるのだろう。どうすれば、自分の暮らしの中に新たな発見をもつことができるか。とりわけ、人に語りかけることができるか。

いまでは手に入りにくくなった本から引用もずいぶんとあって(図書館で相互貸借を期待するにしても、ちょっと難しそうな本もあり)、ずるずると読みたい本なのだが、うしろの予約待ちの人がいるので、いったん図書館へ。でも、また借りてきて、ときどき読みたい本。

それにしても、この本で書かれている、魚雷さんが好む「怠け者」「世捨て人」の系譜につらなる作家に、女性の姿がみあたらないのは、怠けや世捨てという範疇に女性がいたとしても、それを本にまでして残せる機会がなかったのだろうかと、そんなこともちょっと思った。

(12/16了)
 
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第39回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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