読んだり、書いたり、編んだり 

困ってるひと(大野更紗)

困ってるひと困ってるひと
(2011/06/16)
大野更紗

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買おっかな~と思いつつ、いろいろ本が立て込んでいたので、図書館にリクエストしたまま待っていたのが、こないだまわってきて読んだ。webでの連載もぱらぱらっと読んでいたが、加筆もされてまとまった本を読んで、十二単のように布団をかぶっている表紙のこの絵が能町みね子さんのものだと、初めて気づく。『オカマだけどOLやってます』の能町さん。

そして、大野さんは「田舎の優等生」やったのかぁと思いながら読む。
▼幼稚園から中学校まで、わたしは、学校の成績はいつもいちばんで、生徒会長で、町では優秀で通っていた。典型的な、田舎の優等生である。
 子どもの頃のわたしには、ほんとうの友達は、いなかったのかもしれない。田舎の「土着」のコミュニティのなかで、それに守られ育ちながら、窮屈さ、圧迫感がたまらなかった。息苦しかった。
 「田舎で生活するってのはな、都会人が夢見るような、生易しいもんじゃねえんだ」
 パパは、最近よくそうこぼす。地域の付き合い、親戚付き合い、冠婚葬祭、地域の人足。さまざまな、つながり、しがらみ。噂、周囲の目。
 「土着」コミュニティはいつしか、少女時代のわたしにとって、自己実現の術のない、どうにかして抜け出したい、遠くへ追いやりたい、そういう鬱々とした場所になっていった。(p.38)

そんな福島の片田舎の"ムーミン谷"から、東京は四谷のソフィア、おフランス語学科へ。そこでまた"転向"し、マドモアゼルはビルマ女子となる。大野さんは、ビルマを知りたいと思い、活動につっこんでいき、激務に身を投じた。そして、眠る時間もないような支援の日々が続き、院生一年めの秋に、身体じゅうがおかしくなって、痛くなって、自力歩行もできないような状態になる。

それからの「困った」日々、「普通」がとんでもなく大変になった一年あまりのこと(のごく一部)が、この本には書かれている。
私の母も、大野さんとは違う病気だが「難病」を発し、「自分でできないこと」が増えていき、「自分でもどうにもならないこと」が増えていき、身体障害者手帳をとり…という経過をたどったので、「病気」の診断がなかなかつかないことや、とにかく申請主義で縦割りで要求書類が多い役所のことや、医療費その他の減免に居住地によってえらい差があることや、診療報酬の設定のおかげで慢性病や難病の患者がさまよわなければならないことや、制度の谷間やら穴がぼこぼこあることや…それらは、傍で見ていたなりに実感していた。

母が死んでもう10年以上経つが、どないせえっちゅうねんと言いたくなった大野さんの「難」を読んで、なんや全然変わってへんのやなと(もしかしたら制度がひどくなってるところもあるんちゃうかと)、ちょっと萎えた。そして、そういう状況にでもならなければ、ほとんどの人は、こういうことを知らへんのやなということも、あらためて思った。

「何でもするよ」「何でも言って」と、かなり多くの人が病人にかけるであろう言葉は、しばらく入院してパーッと完治するようなケガや病気の場合ならともかく、"living with 病気"の人間には、いつまでも頼れるものではないことも。まさに大野さんの卒論テーマのとおり「援助は誰のものか」。

大変でない難病はなくて、大野さんが「自分でもどうにもできへん自分」と向き合った日々、制度のスキマの「道なき道」を潜りぬけてきた状況を読んでいると、ほんま大変やなあと思いつつ、この本はやたらおもしろかった。笑えたりした。「難病」を、こんな風に書ける人もおるんやなと思った。

「何か書いてみたい」から始まったという記録は、ぶっとんで大変そうにみえて、でも「人が、生きる」というところではこの世の誰とも地続きで、そこが読ませるんかなと思った。院生さんだからか、ちょっと難しい言葉づかいが多いなと思ったところもあるが(とくにカタカナ表記の言葉)。

先日は、『ほのさんのいのちを知って』の西村理佐さんと大野さんの対談があったそうだ(このことも国本さんにおしえてもらった)。
大野更紗さんとの出会い、そしてこれからのこと。

(11/29了)
 
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乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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