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光さす故郷へ(朝比奈あすか)

光さす故郷へ光さす故郷へ
(2000/07)
朝比奈あすか

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『憂鬱なハスビーン』の著者の、なにか別の作品を読んでみようと借りてきた本。小説なのかと思っていたら、著者の大伯母さんの話だった。結婚して満州へ渡り、ソ連参戦後に命からがら故郷へ帰りついた、よしの話。

もうあと少しで本土という夜に、よしが命をわけた娘の初代は死ぬ。2歳と半年だった。よしが満州から故郷へ向かうあいだにも、行きだおれ、命をおとした女こどもが幾人もいた。

帰還船のなかで子どもを亡くし、しかし海に葬ることを拒んで、子どもの亡骸とともに下船した若い母親が、よしのほかに3人いたという。港町から少し離れたところにある火葬場で、母親たちは自分に言い聞かせるように声をかけあう。

「ねぇ、みなさん、辛いけど、強く生きていきましょうね」
「本当に辛いけど、それでも私らは生き延びた。これからだって生きていかなきゃならないんだよ」
「そうね、この子たちの分も、うちたちが必死で生きんとね」
「がんばりましょうよ、ね」

松崎運之助さんが、よしと同じように子どもを亡くして帰ってきた母から、毎年の誕生日に聞かされたという話を思い出す。「おまえの命のうしろには、無念な思いで死んでいったたくさんの命がつながっとるとよ」と、松崎さんの母は繰りかえし運之助さんに伝えたという(『母からの贈りもの』)。
よしを満州へ渡らせた夫の寅男は、ウランバートルの捕虜収容所で死亡していたことが、ずっとあとに知らされた。「暁に祈る」で悪名高い吉村隊にいたのだという。

80になろうという大伯母は、自分の半生を、22歳の著者に一晩中話しつづけた。そもそもは、40で再婚したというこの大伯母に「じゃあ前の旦那さんとはどうして別れちゃったの、子供はどうしたの」という不躾な質問を、好奇心のおもむくまま投げかけたことから、この大伯母の思い出話は始まったのだった。

「私には、帰りたいと思える場所、守りたいと思える人がいた。それはね、本当に幸せなことだったと思うわ」と、よしは振り返る。ただひたすら故郷が恋しく、命を懸けても帰りたかった。

この国が、未来の子供たちにとって、帰りたいと思える場所であれば良い。そして、守りたいもののために抱く情熱の矛先が、決して自分たちの辿った過ちと同じ方向へゆかないように。
 よしは強くそう思う。
(p.211)

ほとんど一気に読み終える。

『We』148号『We』148号でも、誕生日に聞く母の話について松崎さんは語っている。

(11/21了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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