読んだり、書いたり、編んだり 

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

漁港の肉子ちゃん(西加奈子)

漁港の肉子ちゃん漁港の肉子ちゃん
(2011/09)
西加奈子

商品詳細を見る

社納さんが、つい衝動買いしたというこの本を、モンキーさんのライブの日に貸してもらう。モンキーさんの『ちくわのわーさん』も2冊買って、図書館で借りた本も入ってて、リュックは本でずっしり。翌日、手話サークルのノルマ仕事を終えて、肉子ちゃんの話を読む。

肉子ちゃんはキクリンの母親。ふたりは今、北陸の小さな漁港に住んでいる。そこに至るまでに肉子ちゃんが糞野郎を引き寄せてきた遍歴がすごい。悪い男の騙る、絵に描いたような話を「ほんまやと思ってん」と信じ、金と愛情をそそいできた肉子ちゃん。「ここまでくると、もう、なんかすごい」とキクリンが思ったように、私も、肉子ちゃん、なんでそれを信じるの?と思ってしまう。でも、肉子ちゃんの話を読んでいると、そんなん思う自分のほうが曲がってるような気がしてくる。

小学5年のキクリンの目をとおして、学校のことや、クラスメイトのことや、肉子ちゃんのことや、肉子ちゃんが働いてる焼き肉屋(漁港だからって、みんな魚ばかり食べたいわけではない)のこと、まちの人たちのことが描かれる。

キクリンの日々を読んでいると、仲間はずれにしたこともされたこともある小学校のころをぼんやり思い出す。あまり家に帰りたくなかったころのことも思い出す。小学生は小学生なりに、修羅場もあるし、こころも痛めるし、それで食欲をうしなうことだってある。

ある日、学校から帰ると、「今日はどんな日やったっ?」と肉子ちゃんが言う。「別に。普通。」と答えると、「普通かっ!普通が一番ええのんやでっ!」と普通じゃないシルエットで肉子ちゃんは笑う。あれこれもやもやと腹が立ったキクリンは、精一杯、棘のある言い方で、「肉子ちゃんの普通って何。」と訊く。

「普通っていうのんはな、ご飯食べて、うんこして、勉強して、働いて、お風呂入って、眠ることっ!」 (p.167)
「普通」には、ときどきぴくっとさせられてきたけど、肉子ちゃんのいう「普通」は、一番ええのかもしれへんと思った。

借りた本には帯があって、絵が半分かくれていたけど、表紙のすっごいぶっとい、たっぷりした太ももがいい。このりっぱな太ももの持ち主は、でぶで、ぶさいくで、すごくあかるい肉子ちゃんかもしれへん(西加奈子がかいた絵らしい)。

帯にはこうある。

迷惑かけて生きていけ。
ちゃんとした大人なんて、一人もいない。


この小説のなかでは、北陸の、空想上の漁港になっているけれど、もとは宮城県の石巻がモデルだという。連載中に3月の大震災があったという。キラキラした石巻のおかげでうまれた「漁港の肉子ちゃん」という物語。私は、冒頭の「北陸」を見て、「そうらよ」とか「大丈夫らって」という、このるらるらした言葉は北陸のどこなんかなあと思いながら読んでいたが、そうだったのかと思う。

(11/13了)
 
Comment
 
 






(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
 
Trackback
 
 
http://we23randoku.blog.fc2.com/tb.php/4158-adc30863
みんな、それぞれで生きている。それでいい。圧倒的な肯定を綴る、西加奈子の柔らかで強靱な最新長編。 女優宮崎あおいさんが以前NHK「あさイチ」で紹介してた本、お気に入りの作家
2012.10.05 18:09
 
 
プロフィール
 
 

乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
    乱読ブログバナー
本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第44回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

amazonへリンク

 
 
最新記事
 
 
 
 
最新コメント
 
 
 
 
カテゴリ
 
 
 
 
Google検索
 
 


WWW検索
ブログ内検索
Google
 
 
本棚
 
 
 
 
リンク
 
 
 
 
カウンター
 
 
 
 
RSSリンク
 
 
 
 
月別アーカイブ
 
 
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。