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聞き書き にっぽんの漁師(塩野米松)

聞き書き にっぽんの漁師聞き書き にっぽんの漁師
(2001/10)
塩野米松

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こないだ本屋で、この本の文庫を見て、さんざん迷った挙げ句に買わなかった(買えよ)。図書館に文庫はなくて、親本のほうを借りてきて読む。表紙写真は、石川県の七尾湾で小型底引き漁をする大根常雄さん(大正15年うまれ、74歳)。

まえがきに「仕事柄、日本の各地の漁師に会い、話を聞く機会が多くあった」とある。たしかこの塩野米松という人は、『失われた手仕事の思想』とか『木のいのち木のこころ』の人よなーと、本屋で見たときにも思っていた。

塩野がかつて話を聞いてきた漁師たちは、職人たちと同じように、親や先輩につき、技を覚え、海を覚え、潮を読むことを覚え、漁具の操作や危機からの回避を身につけてきた。そんなふうに引き継がれてきた漁業が廃れ、水産物を輸出していた水産国ニッポンが、いまでは自給率50%ほどの輸入国になっている。

このまえがきを読んで、スーパーの魚介売り場を思い起こす。ノルウェーの鯖、韓国の牡蠣、中国のうなぎ、ロシアの鰊、アイスランドのシシャモ、カナダのサーモン、インドネシアの海老…私が思い出せるものだけでも、世界のあちこちからやってきている。

日本の海で何が起きているのか、漁師たちはそれをどう考えているのか、と考えた塩野は、自分が「漁師という仕事がどんな人によって、どんなふうに営まれているかさえ知らなかった」と気づく。そして、10年ほど前に各地をの漁師を訪ね、どうやって漁師になったか、その生活はどんなものかを聞き歩いた。この本には、沖縄から北海道まで13人の話がおさめられている。ひとり例外的に若い昭和40年うまれの人をのぞいて、他の人は大正~昭和10年代のうまれ。 
どの人も、漁獲量が減っていると話す。乱獲もあったのだろうけれど、魚が育つ藻場(もば)が失われていったこと、そして農薬や生活排水の流入など水の汚染の問題も大きいと思った。

漁師の生活も、どんな魚を追い、どういう漁をするかで違いがある。13人の話を読みながら、さまざまな漁の様子を知る。夫が獲ってきた魚介を妻が行商に出るという話が多い。密漁に出て稼いだ人もある。マグロも一本釣りと延縄漁があることを初めて知った。

東京湾の羽田沖、飛行機が離発着するすぐ近くで穴子とアサリをやっている伊東さんの「今の暮らしはまるでサラリーマンのようだ」というのは印象的だった。しかもここのあたりは東京オリンピックの前に埋め立てで漁業権を放棄し、当時としては大きな補償金を手にしている。その補償金でみんな家を建て替え、伊東さんの弟は大学に行けたという。

オホーツクのホタテ漁・冨澤さん(この本のなかでは例外的に若いひとり)の稚貝をまいて4年かけて育てて獲るという話は、他の漁師の話とはちがって、農業のようですらあった。

多くの人は、祖父、父と漁師だが、会社づとめをしてから漁師になった人もいる。子どもには継がせていない人がほとんどだ。当たれば大きい、当たらなければさっぱりということはあるにしても、漁師の収入が必ずしも悪いわけではない。七尾の大根さん「陸(おか)で勤めた場合は何十年か勤めな一人前の給料は出んがいね。漁師の場合は、一年経てばもう一人前や。みな漁師になったのは、それが魅力でなかったんやないかな。」

だが、"勤め人"のような暮らしとはまた違ってくるし、やはり体力勝負のところが大きいこと、漁獲は減っていて、この先どうなるか…というところで若い人がこの仕事につかないのはあるんかなと思った。

※ネットでみつけた塩野さんの話
聞き書きの世界。 『木のいのち木のこころ』と塩野米松さん。

(10/25了)
 
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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