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馬たちよ、それでも光は無垢で(古川日出男)

馬たちよ、それでも光は無垢で馬たちよ、それでも光は無垢で
(2011/07)
古川日出男

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管啓次郎の『コロンブスの犬』の文庫解説を書いているのが古川日出男だった。『ろうそくの炎がささやく言葉』を借りてきて、そこに収められている古川のテキストも読んだ。古川のものごっつい分厚い小説だという『聖家族』のことは、『ニッポンの書評』でも出てきたなあと思い出していた。

なにか小説を読んでみようと思って、この7月に出た本を借りてきたのだった。3月11日以降、「福島出身の作家」と扱われるようになった古川は、3月11日に若干の揺れを京都で感じていた。阪神・淡路大震災のことは頭をよぎったが、東北のことはもちろんよぎらなかった、という。駅で新聞の号外らしきものを手にしている人を目にして、そのタイトルに東北、太平洋沖、各地で大津波と踊る文字を見る。公衆電話で実家と連絡をとり、ホテルの部屋でテレビの報道から離れられなくなる。

そこから時間は混濁したようになる。

ニュースを報じる画面にうつる同心円に触れながら、そこへ行け、同心円の内側に行けという声が古川には聞こえる。
▼人々は逐われた。町は棄てられた。犬猫も牛も、馬も。遺体すら回収作業が行なわれようとしていない。棄てられている。
 その地に立たなければならない。この衝迫はいったい何なのか。(p.26)
この小説は、あの日のあと、編集者とともにレンタカーで茨城から福島へ走った著者のドキュメントのようでもあり、その合間には昔の小説が顔を出し、あるいは著者自身の過去や現在が語られているようでもあり、報道や政府の言動が記されてもいて、私のアタマのなかの「小説」にはおさまりきらない、ふしぎな本だった(図書館のラベルは913になっていたけど)。

タイトルに「馬」がはいってるのは、相馬のこと、東北の馬たちの話によるものかと思う。馬という家畜の歴史が語られ、馬以前と馬以後の人類史が語られ、相馬に立ち寄った際の、福島県内を走った際の情景が描かれる。神社の駒形を見、馬場にいた馬(ストレスからか脱毛していた馬)をなでる。

古川は福島県の中通りに生まれた。同心円の核のある太平洋岸地方、浜通りではなかった。

▼私は、東日本大震災と名付けられた今回の日本のカタストロフィが、311とまとめられることには抵抗がある。原発事故はそれ以後も進行中だからだ。むしろ三月十一日以降に深刻化したからだ。しかしメモリアルな記号は人に求められるものだし、それは、わかる。(p.102)

(10/23了)
 
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第41回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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