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残される者たちへ(小路幸也)

残される者たちへ残される者たちへ
(2008/12/18)
小路幸也

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こないだ出先で久しぶりに本屋をうろうろしたとき、文庫棚をぐるぐると見てまわって、手に取ったりぱらっと見たり3周くらいして、気になった本が3冊あった。買おうかどうかとかなり迷った3冊(買えよ)。いま図書館で借りてる十数冊の本のことをちらちらと考え、週明けの仕事のことを考え、なにも買わずに店を出た(買えよ)。しかし、気になるので、店を出たところで、本のタイトルのメモをとった(買えよ)。

最寄り駅に戻ってきたところで、またふらふらと本屋に入り(駅前のそう大きくない店)、さっきの3冊をつい探す。店の規模がちがうので、ないかもしれへんなと思っていたが、3冊のうち2冊はあった。またぱらぱらっと開いたり、棚に戻したりしたあげく、管啓次郎の『コロンブスの犬』の文庫を買って帰って読んだ。

『残される者たちへ』は、買わなかった2冊のうちの1冊(買えよ)。1週間して、ちょっと本のスキマができたので、図書館で単行本を借りてきた。これがどうも大きな「団地」の話らしいというところが、気になる。私も千里ニュータウンというけっこう大きな団地の育ちだから。たぶん。

表紙をひらくと、扉は懐かしいような団地のシルエット。
話は、同窓会の通知からはじまる。方野葉小学校、そこに通っていたのはほとんどが方野葉団地の子どもだった。既に廃校になってしまった小学校。親子二代でその団地に住んでいる者もいるが、子どもの大半は団地を離れ、残っているのは老人になった親世代。棟によってはずいぶん荒れた状態になっているらしい。

私が千里ニュータウンで小5まで通っていた学校も廃校になってしまった。私が通っていた頃は、全校で800人とか900人の子どもが通っていた。だんだんよその学校のことを知るようになるまで、それがけっこうな規模の学校だとは気づかなかった。その学校も、長いこともう廃校になるらしいと言われつづけて、そして廃校になった。千里ニュータウンも、いつからかオールドタウンとよばれている。

この小説のほとんどは、川方準一、芳野みつき、藤間未香の3人の語りですすむ。わずかに押田明人の語りが挟まれる。

川方準一と押田明人は方野葉小学校の同級生、藤間未香は2つ年下の同窓生で、もちろん同じ方野葉団地の育ち。同窓会でほとんど四半世紀ぶりに顔をあわせた。おかしなことに、同窓会で再会したとき、川方準一の記憶からは、押田明人の存在がまるで欠落していた。

他の同窓生のことはわかるのに、押田のことだけが何もわからない、同じ団地の向かいの棟で、同じクラスにいたというのに、全くもって思い出せないのだ。しかも、藤間未香によれば、準一と押田は何をするにもいつも一緒で兄弟のように仲が良かったという。その押田のことを考えて、同窓会のあった夜にパニック状態にまでなった準一。

いったい何がどうなっているのか?

芳野みつきは中学2年生。冬休みに祖父母をたずねた北海道旅行で交通事故にあい、母に抱きしめられたまま助かった。祖父母と母は亡くなった。それ以来、みつきには、母の〈記憶〉が浮かぶようになった。お母さんの記憶の中にあったはずの〈思い出〉を、わたしが〈懐かしい〉という間隔と一緒に思い出す。これも違う、私の思い出じゃない、でも懐かしい、そんなことを感じるようになった。

そんなみつきのケアを、精神医学方面の医者になった藤間未香が担当することになった。同窓会後にパニックになった準一をうけとめたのも未香だった。偶然といえば偶然。すべては、方野葉団地に関係があるらしい「なにか」。

こういうのをSFというのか? 話の最後のほうは、ちょっとついていけない感じになったけど、団地育ちの同窓生たちの話は、なつかしく読んだ。 

(10/15了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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