読んだり、書いたり、編んだり 

小暮写眞館(宮部みゆき)

小暮写眞館小暮写眞館
(2010/05/14)
宮部みゆき

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9月終わりに妹に会ったとき、もうずっと前に図書館に予約した『小暮写眞館』が届いたと言っていた。持ち歩いて読まれへん、こんな厚い本やと思わんかったとも言っていて、そうやなー、あれはえらい厚い本やったなあと本屋でチラっと見たのを思い出していた。

うちの近所の図書館はどうかと蔵書検索をしてみたら、去年はたぶん100人か200人くらい予約がついていたであろう本は、44冊もある複本のほとんどが今も貸出中ではあるものの、予約待ちはほとんどいなくなっていた。それで私もさくっと借りてきてみた。本文は700ページあまり。なかなかイッキ読みはできなさそうな厚さ。

さて、いつ読もうかと借りてきてしばらく積んでいて、久しぶりにぐるぐるめまいにやられて、人と会う約束を全部キャンセルしておとなしくうちにいた日に、読んでみた。いろいろと書評や紹介も出ていたのだろうけど、まったく読んでいなかったので、どんな話やろ?と思いながら。
小暮写眞館は、花菱一家が住むことになった、商店街のなかの古い店舗付き住宅。変人の父と母が、フツウは取り壊すもんやろという"古家"付きの土地を買い、その古い家を手入れして、おもしろいから店舗もそのままで住もうと言い出した。

主人公は、その変人両親の長男である、花ちゃんこと花菱英一、高校生。一緒に住んでいるのは、両親と弟のピカこと光。ピカの上に、風子という妹もいたが、そのふうちゃんは7年前、4歳のときに一晩で具合が悪くなって死んでしまった。それ以後、親戚とのつきあいをほとんど断って、けれどご近所や息子たちの友人、その家族などとはかなり親しくつきあいながら花菱一家は暮らしている。

第一話、第二話、第三話と、いずれも"心霊写真"ないしは"トリック写真"の話が出てきて、これは花菱英一がそういう写真の謎を解いていく話かと思った。その謎を解いていく過程で、英一は古い商店街やその近くに住む老人たちを訪ねて話を聞いてまわり、このあたりが東京の空襲でずいぶんとひどくやられたことを知ったり、高校の同級生や先輩と話しながら、この人はそんな風にものごとを見ることができるのかと驚いたり、小暮写眞館を紹介した不動産屋の社長や事務員の女性と関わりながら、大人の世界、大人の考え、人生の知恵のようなものを知ってもいく。

写眞館というだけあって、写真ネタの話、しかも同じような謎解きパターンかと、途中でほんの少し飽きる気持ちになったけれど、第三話のあたりから、ちょっと流れが変わる。

風子の死に、父と母だけでなく、ふうちゃんが死んだときにはまだ2歳だった弟のピカも、英一自身も、責任を感じていた。巻末近く、英一が「お兄ちゃんなんだから」「お兄ちゃんのくせに」と叱られ、期待され、それに拗ねて、むくれて、自分こそが風子を死なせてしまったのだと振り返る場面は、ちょっと泣いてしまった。

厚い本だったけれど、読んだあと、ほうっとした。英一の、テンコやコゲパンとの朗らかな高校生活も読んでいて楽しい。両親の変人ぶりもおかしい。不動産屋の社長のことばや、テンコの父のことばや、あるいは小暮さんの娘さんのことば。英一が話を聞いてまわったお年寄りたちのことば。そして不動産屋の事務員・柿本順子のことば。こんな風にナナメの関係の大人とつきあえたり、話ができたりというのが、うらやましい気がした。

自分が高校生のときの、そんな大人とのつきあいは、あったのかもしれないが、ほとんど思い出せない。

(10/14了)
 
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Author:乱読ぴょん
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本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

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