読んだり、書いたり、編んだり 

図書館ねこ デューイ―町を幸せにしたトラねこの物語(ヴィッキー・マイロン)

図書館ねこ デューイ―町を幸せにしたトラねこの物語図書館ねこ デューイ
―町を幸せにしたトラねこの物語

(2008/10/10)
ヴィッキー・マイロン

商品詳細を見る

こないだ本屋で久しぶりに長い時間うろうろしていたとき、この本が文庫になってるのを見かけた。「ブックマーク」の読者さんからもおすすめされていたし、タイトルはしっかりおぼえていたが、図書館ではずいぶん予約がついていて、すぐに借りられそうにはなかった。文庫になったなら、もう本はあいてるかと帰って蔵書検索をしてみると、あいていたので借りてきた。

久しぶりにぐるぐるっとめまいにやられた翌日、うちでおとなしくこの本を読んでいた。「町を幸せにしたトラねこの物語」とサブタイトルにあるこの本を、私はすっかり小説なのだと思いこんでいたが、読んでいてふと気づくと、このねこ・デューイがいる図書館の館長は、作者その人、ヴィッキーだった。ええっ?と、カバーの袖の作者略歴を読むと、これはフィクションではなくて、ノン・フィクションなのだった。ラベルも「645.7」、これは「家畜・畜産動物各論」のなかの「猫」だ。そういえば、目次のページには猫の写真がいっぱいで、それが「デューイ・リードモア・ブックス」という名の猫だった。

図書館に猫? やっと聴導犬や盲導犬はどうぞというようなことになっている日本の図書館のことを考えると、ぬいぐるみの猫ならともかく、生きた猫が図書館にいて、しかも来訪者を出迎え、ひざに乗ったり、棚にのぼったり、カートに乗っていたりするというのは、ちょっと想像を絶する。けれど、この猫・デューイは、小さな図書館を出会いの場に変え、昔ながらの町に活気を吹きこみ、地域全体をひとつにまとめた存在だった。

そんな話がこの本には書いてある。
合州国の町のある小さな図書館が、どんな風に運営され、どんな場で、そこへどんな人が来て、スタッフはどう仕事をしているか、という図書館への興味からでも、この本はおもしろい。

▼りっぱな図書館は必要なものを与えてくれる。地域社会の生活にすっかり溶けこんでいるので、かけがえのない存在になっている。いつもそこにあるので、誰も気づかないのがりっぱな図書館だ。(p.134)

この本の作者であり、真冬の寒い朝、本の返却ボックスで見つけた小猫を図書館に必要な存在だと直観した館長でもあるヴィッキーの半生記としても読める。

22歳で結婚、娘のジョディがうまれる。出産の際の医師の不手際で体調をくずし、卵巣と子宮を摘出されてしまう。その後、夫のアルコール依存症に苦労し、離婚。それから福祉の世話を受けながら大学へ行き、地元の図書館につとめるようになる。シングルマザーとして娘を育てながら、図書館長として20年をつとめる。その間にも、弟が亡くなり、兄が自殺し、自身も乳がんを発して闘病する。

▼それが人生だ。わたしたちは誰もがときどきトラクターの刃を通過している。誰もがあざをこしらえ、切り傷もできる。ときには刃が深く食いこむこともある。幸運な人は、かすり傷とわずかな出血で終わるだろう。だが、それですら重要なことではない。いちばん大切なのは、あなたを抱きあげ、きつく抱きしめ、大丈夫だといってくれる人がいることなのだ。(p.318)

そして、もちろん猫の話だ。猫の行動はおもしろい。図書館という、日本ではそこに猫がいるとは想像しにくいところにいる猫が、どんなことをするか。やってきた人間とどう関わるか、あるいはそっぽを向くか。

小さな町の人が、どう誇りをもち、地域社会の精神がそのことでどんなに高揚するかという点でも、この図書館ねこの話は印象的だった。

▼スペンサー公共図書館は目に見えて変わった。利用者数が増えた。人々は以前よりも長時間館内で過ごすようになった。幸せな気持ちで帰っていき、その幸福感は家庭に、学校に、仕事場に持ち帰られた。さらにすばらしいことに、人々は図書館の話しをさかんにするようになった。(p.73)

といっても、「猫を飼えば」、それで自動的に利用者数が増えるわけではないし、町の人たちの誇りにつながるわけではないのだと、そこを読み違えないようにしないといけないだろうと思う。

(10/13了)
 
Comment
 
 






(編集・削除用)


管理者にだけ表示を許可
 
Trackback
 
 
http://we23randoku.blog.fc2.com/tb.php/4129-4c246cb4
 
 
プロフィール
 
 

乱読ぴょん

Author:乱読ぴょん
    乱読ブログバナー
本ネタのミニコミ誌『ブックマーク』を編集発行しています(1990年9月創刊~ 昔は隔月発行でしたが、今は年2回発行で、現在87号)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2014年4月(313号)より「本の道草」を連載中(現在、第43回)。

月刊誌『ヒューマンライツ』で、2004年3月(192号)より2014年3月(312号)まで、本ネタ「頭のフタを開けたりしめたり」を連載(全119回、連載終了)。

『くらしと教育をつなぐWe』誌で、1999年4月(71号)より2014年2月(188号)まで、本ネタ「乱読大魔王日記」を連載(全118回、連載終了)。

amazonへリンク

 
 
最新記事
 
 
 
 
最新コメント
 
 
 
 
カテゴリ
 
 
 
 
Google検索
 
 


WWW検索
ブログ内検索
Google
 
 
本棚
 
 
 
 
リンク
 
 
 
 
カウンター
 
 
 
 
RSSリンク
 
 
 
 
月別アーカイブ